台風19号 茨城県内で浸水被害4659棟 重い被災者の修理負担

台風19号の上陸から12日で1カ月。大雨による建物への浸水被害は、茨城県内で4659棟に上り、被災者には自宅修理の費用負担が重くのしかかる。農地や農機具が浸水し、生活の糧を失った農家もいる。再建を見通すのは難しいのが実情だ。【川島一輝、小林杏花、鳥井真平】
那珂川の氾濫で浸水被害を受けた常陸大宮市野口地区。決壊した堤防の前に住んでいた皆川晃さん(59)は、4代続いた農業を廃業し、先祖から受け継いだ土地を離れる決心をした。当面はスーパーでのアルバイトで生計を立てる。
自宅前に広がる9アールの畑は浸水し、農機具も故障した。主力のトマトのビニールハウスは骨組みが変形し、内部にも泥が流れ込んだ。借金して元に戻しても、その借金を返すのに20年以上かかるという。築80年近い自宅も1階が床上1・6メートルまで浸水して壁や床の損傷が激しく、再建は諦めた。
現在は、同居する80代の両親と市営住宅で暮らしている。賃料の無償期間が終わっても、公営住宅での暮らしを希望するつもりだ。市からは今回、受け取れる公的な支援金は100万円超と聞かされた。自宅の解体費用さえまかなえない可能性が高く、皆川さんは「残りはアルバイトで稼ぐしかない」と肩を落とした。
農機具買い直しで1000万円以上
水戸市岩根町で次男と農業を営む海野太一さん(67)も、自宅だけでなく農地と農機具が水につかってしまった。農機具を買い直すだけで1000万円以上かかるという。
収穫を控えていた農作物の被害は数百万円に上る。いまは浸水に耐えた根菜類の収穫と自宅の片付けで精いっぱいで、農地を元に戻すのにいくらかかるのか計算できていない。来春の作付けはできそうになく、収入の見通しは立っていない。
自宅の修理費用はざっと1600万円。収入が見込めない上に、受け取れる保険金の額も分からず、「借金しなければならないかも」と海野さんは頭を抱えた。
同じく水戸市岩根町の薗部玉枝さん(84)は、平屋建ての自宅が全壊した。ほとんどの家財道具が浸水して使えず、処分のために運び出すと、自宅は空き家のようになった。
この場所で自宅の再建を考えているが、受け取れる保険金や支援金の金額が確定しておらず、修理を依頼できずにいる。とりあえず同居する息子と一緒に県営住宅へ移ったが、「何もかも失った。この先どうしたらいいのだろう」と薗部さんは嘆いた。
ひたちなか市枝川の軍司文男さん(71)は、浸水した自宅1階を修理中で、2階で生活している。自宅は那珂川に近く、浸水被害を受けるのは4回目という。修理や家財を買い直す費用は約1500万円。軍司さんは「想定外の出費でほぼ自己負担。気が重い」と話した。