「一番大切な宝物」「ごめんね、会いたい」虫歯治療2歳児死亡 父親涙の陳述 損賠訴訟初弁論

麻酔薬を使った虫歯治療後に容体が急変して死亡した長女(当時2歳)の両親が、適切な処置を怠ったとして福岡県春日市の歯科診療所の元院長や担当歯科医らに計約1億500万円の損害賠償を求めて福岡地裁に提訴した。6日は同地裁(松葉佐隆之裁判長)で第1回口頭弁論があり、父親(33)が「子供の命が失われないようにしてほしい」と涙ながらに意見陳述した。
死亡したのは、同市の山口叶愛(のあ)ちゃん。元院長らは弁論でいずれも請求棄却を求めた。
訴状によると、叶愛ちゃんは2017年7月1日、歯科診療所で虫歯治療のため身体拘束具を付けられ初めて局所麻酔された。担当歯科医は血圧や脈拍などを計測するモニターを付けることなく治療を始め、呼吸が途切れるなどの異変があったが状態を確認せず、処置を終えて退室した。
母親(27)が叶愛ちゃんを抱きかかえた時は目の焦点が合わず、両腕が伸びきるなど体が硬直。父親が元院長に異常を訴えたが「よくあること」と言い、経過観察を指示するだけだった。
その後、叶愛ちゃんは激しくけいれんするなどし、別の病院へ救急搬送されたが、2日後に死亡した。死因は低酸素脳症だった。
両親は、低酸素脳症は麻酔薬リドカインの急性中毒によるものと主張。歯科医の処置には麻酔中毒を生じさせた過失があり、元院長には医療事故を防止する診療体制や救急対応などに問題があったとしている。
父親は意見陳述で「叶愛は私たち家族にとって一番大切な宝物でした。時間がたつほど、しっかり守ってあげられなくてごめんね、会いたいという思いが込み上げてきます」などと訴えた。
叶愛ちゃんの死亡を巡っては、福岡県警が3月、元院長を業務上過失致死容疑で福岡地検に書類送検した。【宗岡敬介】