アイリスオーヤマが家電事業を強化している。同社は2009年に家電事業に本格参入。その後、13年に開発研究の拠点となる「大阪R&Dセンター」を開設。大手メーカーの退職者などを積極的に採用し、10年には100億円規模だった売り上げは、18年に810億円まで成長。19年もさらなる成長を見込んでいる。家電事業を中心に、グループ全体の売り上げも右肩上がりで成長を続け、18年には4750億円まで拡大した。22年度にはグループの売り上げを1兆円規模まで伸ばすことを目標に掲げている。
グループ売り上げ1兆円という目標を達成するために、アイリスオーヤマが新たに投入するのが「テレビ」だ。シリーズ名は「LUCA(ルカ)」。18年11月からテスト販売を行っていたが、得意とするユーザー視点を重視した機能「なるほど機能」を追加したモデルを、11月20日から順次発売していく。音響にこだわった「フロントスピーカーモデル」3種類とデザイン性にこだわった「ベゼルレスモデル」の4種類で、最も安いものは43V型のベゼルレスモデルの9万9800円(税別)。10万円台前半がボリュームゾーンとなったラインアップだ。
目玉となる機能は、「音声認識」だ。しかも、AIスピーカーのようにインターネットに接続する必要がなく、アプリなどへの登録も必要ない「完全オフライン」で認識する。同社によると、音声だけで操作できる機能は業界でもかなり珍しいという。
ユーザーがテレビに付属する音声操作リモコンに対して「ねえ、るか」「るか、テレビ」と話しかけることでリモコンが作動する。さらに、「電源を入れて」「音消して」などと呼びかけることで、対応した動作をリモコンからテレビへ赤外線で指示。操作できるワードは27種類が用意されている。また、ニューラルネットワークやディープラーニングにより、「寝起き」「酔っ払っている状態」などのイレギュラーな音声や、方言にも対応できるという。
同社は音声で操作できる家電として、LEDシーリングライトも既に販売している。ただ、こちらは音声操作リモコンがライトに内蔵してあり、テレビとは互換性がない。音声認識機能を搭載した家電について、アイリスオーヤマの石垣達也家電事業部統括事業部長は「オフラインの認識と、AIスピーカーのようなオンラインの認識との両輪で推し進めていきたい。リモコンが存在する家電では、極力全て音声認識を展開していく」と話した。
テスト販売では10万台を出荷
18年11月からのテスト販売は、アイリスオーヤマのECサイトや家電量販店だけでなく、同社の“主戦場”ともいえるホームセンターでも実施。石垣氏は「『大型のテレビに興味があるが、家電量販店で見ても高価格のものが多く購買に至らなかった』という人が、ホームセンターを訪問した際にテレビを見つけ、主に価格面に魅力を感じその場で購入するケースも多かった」と話す。
「ホームセンターで売れることは全く想定していなかった」と石垣氏は話すが、予想外の反響を受けて生産が追い付かないことに。19年の2月ごろからは十分な供給数を用意できたため、「18年11月から1年間の結果として『10万台』だが、実際はこの半年ほどで売れたものがかなり多い」と石垣氏。音声認識機能付きのテレビは、初年度で5万台の出荷を目指すという。中長期的な目標としては、液晶テレビシェアの10%を掲げた。
テレビ市場については、「国内では各メーカーの寡占状態にあり、技術競争に走ってしまった経緯がある。その結果、機能は充実しているが価格も高くなってしまった」と分析。高機能、高価格の国内メーカーとシンプルな機能に絞って低価格で提供する海外メーカーとで2極化しているとの考えだ。
アイリスオーヤマでは、「機能(Simple)」「価格(Reasonable)」「品質(Good)」の3つを取って「SRG」というコンセプトを掲げる。国内メーカーの土俵には上がらず、シンプルな機能に絞り、そこにユーザー視点の「なるほど機能」を追加して戦っていく。
電子情報技術産業協会が発表している「民生用電子機器国内出荷統計」を見ると、15年から17年まで液晶テレビの売り上げは前年比で減少傾向にあった(18年は104.2%に増加)。ただ、内訳を見ると大型のテレビはおおむね成長を続けている。アイリスオーヤマが展開するテレビも、43V~65Vと大型のものだ。ゆくゆくは単身世帯向けにゲームに特化したモデルや、より小型のモデルも展開していくというが、まずは大型テレビで存在感を示したい。