家賃全額とグリーン車交通費を負担してまでゲーム制作会社が人材を募集するワケ

ゲーム制作を手掛けるテクロス(東京都渋谷区)が、東京と京都の2拠点で働く「二拠点就業社員」を募集している。さらに、条件として2拠点それぞれに同社が費用を実質全額負担する社宅を用意したり、移動に使うグリーン車費用を負担したりすることを提示している。同社によると、社長や役員を含めて全社員には普通席での移動を定めており、今回の待遇は異例となる。

同社は2009年に設立。当初は滋賀県にオフィスを構えていたが、受注案件の増加に伴い京都へ移転した。その後、京都をクリエイター拠点としつつ営業やマーケティング活動の拠点として、東京にもオフィスを設立した。

今回の採用プロジェクトの担当者によると、募集の大きな理由は「両拠点の意思疎通の難しさ」だ。5年ほど前に50人規模だったスタッフは現在5倍超にまで増加している。さらに、両拠点が共同して行うプロジェクトの数も増加傾向にあるという。

担当者は、同社の特徴に「ゲーム制作をワンストップで行えること」を挙げる。通常、ゲーム制作会社では音響やイラストなどは外注するケースが多いというが、テクロスではプランナーからエンジニア、アニメーターやイラストレーターなど多くの人材を抱える。

その一方で組織が巨大化し、両拠点のスタッフや進行を把握している人員は現在社長や広報担当者などほんの一握り。マネジメントにも限界が出始めたため、2拠点のマネジャーとなる人材を募集するに至った。

家賃やグリーン車費用を負担してまで2拠点を維持する理由
今回は、「拠点横断コーポレートマネージャー候補」「経営企画室」「フリー職」の3部門で人材を募集。それぞれ当初は1年契約として採用する。契約終了後には無期雇用(正社員)での採用を前提としているが、業務委託にも対応するという。

なお、「主な待遇」として、「東京・京都それぞれに社宅を用意」「東京=京都の移動はグリーン車(月に1度、片道)」を提示している。これについて担当者は「一般的にIT人材というのは移動をおっくうに感じがち。少しでも移動のハードルを下げるためにグリーン車の費用を負担することにした」と話す。一方で費用の負担は「月1回、片道分」に限られている。これについては「なかなかない制度なので、とりあえずこういう条件になった」と話している。

しかし、ここまでの負担を会社がするのであれば、東京と京都のオフィスを統合するのも1つの手ではないだろうか。担当者に疑問をぶつけてみたところ、「拠点を分けるのには理由がある」と回答があった。特に京都に拠点を残すことの意義が大きく、「京都には多くの美大などがあり、クリエイターを採用しやすい」こととともに意外な理由も挙がった。それは、「人材の定着」だ。「東京には著名な制作会社が多く、東京で働いているとすぐ転職されてしまうリスクがある、京都で仕事をすることで、長く落ち着いてクリエイター業務に当たってもらうことができる」と担当者。

「デュアルワーク」と聞くと、1つの会社にとどまらない働き方のイメージが強いが、今後はこうした1社内の2拠点を股に掛けるような働き方も増えていくのだろうか。