川崎市宮前区のトンネルで平成18年9月、近くに住むアルバイトの黒沼由理さん=当時(27)=が刺殺された通り魔事件で、殺人罪に問われた無職、鈴木洋一(ひろかず)被告(39)の裁判員裁判第2回公判が21日、横浜地裁(景山太郎裁判長)で開かれた。被告人質問で、鈴木被告は「被害者が困惑し、苦悶(くもん)する表情が見たかった」などと犯行の動機や経緯を説明した。
弁護側の質問に対して鈴木被告は、事件当日は仕事上のストレスがたまっており、「かなりイライラしていた。(黒沼さんを)ただ脅かすだけでは済まないと思った」などと犯行直前の心情を吐露。仕事帰りに立ち寄った実家から自宅までの帰路、偶然見かけた黒沼さんを犯行現場のトンネルに先回りして待ち伏せ、凶器の包丁で殺害するまでの経緯を説明した。
別の事件で服役中の28年1月に、神奈川県警に犯行をほのめかすはがきを送ったことについては、27年に自身が病気を患ったことが契機だったとし、「自分は命を救われたけど、何もしていない被害者が、なぜ命を落とさなくてはいけなかったのかを考えた」と説明。「尊い命を身勝手に奪ってしまい、本当に申し訳ない」と、謝罪の言葉を口にした。
一方で、検察側や裁判官から、最初に黒沼さんの腹部を刺した際に殺意がなかったかを問われると、「死ぬ危険性があるという認識がなかった」などと否定。その後、胸部を刺した理由については、抵抗した被害者の足が「自分の股間に当たって激高」したため、「殺意に基づいて刺した」とした。