福岡市の創業支援施設で、有名ブロガー「Hagex(ハゲックス)」として活躍するIT関連セミナー講師が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた同市東区の無職松本英光被告(43)の裁判員裁判判決が20日、福岡地裁であった。岡崎忠之裁判長は「インターネット上でやりとりがあっただけの被害者に一方的な殺意を抱き、現実に殺害にまで及んだ身勝手な犯行」として懲役18年(求刑懲役20年)を言い渡した。
岡崎裁判長は判決理由で、被告は「Hagex」こと岡本顕一郎さん=当時(41)=らがネット上で集団リンチをしていると考え、「低能」などと罵倒していたと説明。次第に自らもリンチの対象だと思い込み、岡本さんが講師として福岡を訪れることを知り殺害を決意したと述べた。犯行については「逃げようとする被害者を追い掛けて攻撃しており、強固な殺意があった」とした。
争点となった責任能力の程度に関しては、被告の精神鑑定を行った医師の証言を踏まえ、「事件現場の下見をするなど綿密に計画し、事件後には出頭している。自らの意思をコントロールできていた」と指摘。心神耗弱状態だったとして刑の減軽を求めた弁護側の主張を退け、完全責任能力を認定した。
岡本さんの妻は「私たち遺族はずっと終わらない地獄の中で暮らしています」とのコメントを出した。弁護側は控訴について「被告と話して検討する」としている。
判決によると松本被告は昨年6月24日夜、同市中央区大名2丁目の旧大名小跡地を活用した施設に侵入し、1階トイレで岡本さんの首や胸などをナイフで刺して殺害した。(鶴善行)