【目黒女児虐待死、母親被告人質問詳報】(7)九九の表、約束事の張り紙…作ったのは「全部、私です」

詳報(6)は
《東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告(27)の裁判員裁判の第3回公判。
2時間を超えた弁護側の被告人質問に続いて、ついに検察側からの質問が始まった》
《冒頭、検察官が守下実裁判長に「被告人の供述が取り調べ段階と食い違っているし、弁護側の質問も2時間に及んだ。今日はできるところまで進めるが、明日に持ち越す可能性がある」と主張。裁判長も「(持ち越しは)想定していた。できるところまでやってください」と認めた》
《検察官は、優里被告に出生地や職業などを簡単に確認した後、都内のアパートでの結愛ちゃんの暮らしぶりについて質問を始めた。優里被告は、夫の雄大被告(34)=同罪などで起訴=の影響力の大きさを訴える》
検察官「(アパートの)6畳間が結愛ちゃんの部屋になった理由は何ですか」
優里被告「雄大が決めました。先に香川から雄大が引っ越していて、荷物が仕分けされて部屋に置かれていたので、私は『ここが結愛の部屋なんだ』と思いました」
検察官「結愛ちゃんは1日中、6畳間にいましたか」
優里被告「リビングや、雄大の寝室にいることもありました。リビングではテレビを見たりしていました」
検察官「6畳間にいるときは何をしていましたか」
優里被告「結愛専用のパソコンがあって、それを使ってDVDを見たり、勉強したり、寝たりです」
検察官「布団を敷いたり畳んだりするのは」
優里被告「結愛がしていました」
検察官「着替えは誰が選んでいましたか」
優里被告「雄大が近くにいる場合は、結愛が自分で選んで着ていました。雄大がいない場合は私がやっていました。雄大に結愛を取り上げられている時間帯がありまして、そういうときに結愛と接すると雄大の機嫌が悪くなるので」
検察官「入浴はどうしていましたか」
優里被告「結愛はほぼ毎日1人で入っていましたが、私が一緒にいられるときは、一緒に入っていました」
《しきりに「雄大が、雄大が」と口にする優里被告。検察官は普段の食生活について質問を始めた。結愛ちゃんの体重は死亡時、同年齢の平均値の約20キロを大幅に下回る約12キロしかなかった。雄大被告がダイエット目的と称し、1日1~2杯の汁物を与えるのみになっていたとされる》
検察官「東京に住み始めた当初、食事を家族でとることはありましたか」
優里被告「みんなバラバラでした。雄大の前では私も食事をすることはできないので、自転車で近くの店に行き、パンなどを買って公園で食べていました」
検察官「雄大被告はどうしていましたか」
優里被告「レトルト食品のようなものを食べていました。東京に引っ越してきたとき、『俺の飯はもう作らなくていい』と言われました」
検察官「では、結愛ちゃんはどうでしたか」
優里被告「雄大から『俺がスーパーで結愛のために買っておく。それだけを食べさせてくれ』と指示されていました」
検察官「食事の機会は朝昼晩、3食ですか」
優里被告「そうです」
検察官「どんな食べ物ですか」
優里被告「主に煮物や五目豆、もずく、といったものです」
検察官「肉や魚、米やパンなどを雄大被告が買ってきたことはありましたか」
優里被告「結愛に対してはありませんでした」
検察官「あなたがそういったものを買ってきて与えたことはありますか」
優里被告「あります。私が買ってきたものは、雄大がいないときにしか食べさせちゃいけないものなんです」
《雄大被告の目を盗んで、おなかにたまりそうなものを与えていたという優里被告。検察官は、栄養状態が悪かったことを認識していたからこその行動ではないのかと詰め寄った。すると優里被告は、少し語気を強め、雄大被告に精神的に支配されていたかのような発言をする》
検察官「あなたとしては、結愛ちゃんの栄養が足りていると思っていたのですか」
優里被告「その『あなたとして』というのが難しいんですよ。雄大が近くにいると、私の頭とか考えも雄大のまんまなんです」
《的を射ない説明に、たまらず裁判長が割って入り、かみくだいて質問をし直す》
裁判長「雄大被告に隠れて、パンなどをこっそり与えていたのはどうしてですか」
優里被告「それは、足りないと思ったからです」
《検察官は裁判長に謝意を述べ、質問を続ける》
検察官「途中から、食事の状況は変わりましたか」
優里被告「変わりました。全てを見ていたわけではありませんが、量が極端に減りました。昼と夜は雄大が準備し、朝は私でした」
検察官「雄大被告はどんな食事を与えていましたか」
優里被告「スープにご飯を入れたおじやのようなものや、スープに野菜が入ったものです。私は前日に、結愛が朝に食べたいものを聞いていました。『チョコレートが食べたい』と言っていたので、あげました」
《事件をめぐっては、雄大被告が結愛ちゃんに対し、膨大な“約束事”を課していたとされる。5歳児にはまだ困難とみられるかけ算の九九や、毎日の体重の記録、ハードな運動などだ。これらは張り紙にして結愛ちゃんの部屋に掲げられていた》
《検察はこうした張り紙を誰が作成したのか、法廷内のモニターに結愛ちゃんの部屋の内部などを写しながら確認する》
検察官「段ボールに書かれた、やるべきことリストや、九九の表などは誰が作ったのですか」
優里被告「私です」
検察官「『ゆあはいっしょうけんめいやるぞ』とか『うそはつかない』などと書かれた張り紙は」
優里被告「全部、私です」
検察官「一部の張り紙には血痕が付着していましたが、何か心当たりはありますか」
優里被告「ありません」
検察官「こうした張り紙などはいつごろ作ったのですか」
優里被告「東京に来てからすぐです。私も香川に住んでいたとき、雄大から結愛と同じような扱いを受けていました。雄大に言われたことをすぐに忘れてしまうんです。だから『壁に張っておけ』と言われていました。そういう癖がついていましたし、東京でも結愛が怒られないようにと思って」
《答えの末尾に、結愛ちゃんへの思いをにじませた優里被告。検察官は、こうした日々の“約束事”を結愛ちゃんにどのように実行させていたかについて尋ね始めた》
=に続く