我が家のコメが救う命 マリ共和国食料支援 小中学校で準備 山梨

世界最貧国の一つに数えられるアフリカのマリ共和国にコメを送る食料支援に取り組む山梨県内の小中学校では今年も発送に向け、コメ集めが始まった。「1合のコメで救える命がある」を合言葉に始まった活動は36年目。全国からコメを募って現地に届ける国際NGOの運動の一環だが、山梨の活動は全国最長で、送る量も最大。全国運動のけん引役になっている。【山本悟】
子どものいじめに悩む都内の母親たちが、マリの窮状を知って「どの国でも誰の命も等しく尊い」と1982年、NGO「マザーランド・アカデミー・インターナショナル」(東京都品川区)を設立し、食料支援を始めた。現在は47都道府県の学校などからコメを集め、毎年12月末に約50トンを船便で届け、自活できるよう田植えも指導している。
マリは、西アフリカの内陸国で北側はサハラ砂漠。同NGOによると、紛争と飢餓が深刻で、今年8月の大洪水では耕作を指導していた田畑も流され、飢餓の拡大が懸念されているという。
一方、県内の活動は、峡南地域5町の校長、教頭、教職員、保護者でつくる峡南教育四者会が84年に始めた。四者会の事務局長を務めた保坂新一・身延町教育長によると、前任の事務局長が同NGOの取り組みを知ったことで始まり、全県に広がった。活動が全県規模に広がったことについて、保坂教育長は地域の経済的な互助制度だった無尽を引き合いに「互いに助け合う風土が活動を支えている」と話した。

各学校の子どもは家庭から1~2合のコメを持ち寄り、全県分を富士川町の四者会事務所に集め、今年は28日にトラックで同NGOの倉庫まで運ぶ。今月14日、同町立増穂小4年1組では子どもたちが30キロ用米袋にコメを入れた。女児は「嫌いなピーマンを食べるようになった」と話し、活動は子どもが食生活を見つめ直す契機にもなっている。
昨年は、峡南地域の小中学校27全校の子どもら6300人をはじめ、県内の計216校が参加。コメ計8・6トンと船代金として募金した約142万円を届けた。NGOによると、他県では10トン近く集める取り組みはなく、活動歴も30年を超えるのは山梨だけ。同NGOの吉田綾子事務局長は「我々の運動は山梨の活動に助けられている」と評価している。