大阪のベッドタウンとして知られる奈良県生駒市の住宅街にイノシシが相次いで出没し、公園の芝生が無残に掘り返されるなど被害が深刻化している。捕獲頭数はここ3年で3倍以上に増加。県は過去に同様の被害に悩む奈良公園(奈良市)でロケット花火による威嚇やカプサイシンを含ませた液体の散布という対策を実施したが、どれも効果は薄かったといい、関係者は頭を悩ませている。(桑島浩任)
芝生の被害があったのは、生駒市さつき台のさつき台第5公園。約600メートル南西には市立壱分(いちぶ)小学校もある。
近くに住む男性(70)によると、10月30日午前8時ごろ、散歩で公園に寄ったところ、ブランコ前の芝生や遊歩道に計数十カ所の掘り返された跡を見つけたという。公園では以前からイノシシが目撃され、注意書きも3カ所に貼られており、男性は「ひどい状態で驚いた。足を取られるので危ないし、イノシシに出くわしたらと思うと孫たちを遊ばせられない」と不安を口にする。
別の男性(68)も「4月にも掘り返された跡を見つけ、市役所に連絡した」といい、対策を行う市農林課の担当者は「イノシシがミミズなどのエサを食べたのかもしれない」と話す。
同課によると、平成27年度、市内でのイノシシの捕獲頭数は76頭だったが、28年度は183頭、29年度は227頭、30年度は238頭と3年で3倍以上に増加。生駒山に近い田畑を中心に出没しており、人的被害はないが、市民からの要請を受けて市が捕獲用のおりを設置している。しかし、公園や住宅街には危険なため設置できず、「今回のケースは捕獲して対処するのは難しい」という。
公園を管理する市みどり公園課によると、公園と山の境界にはイノシシの侵入を防ぐフェンスが設置されている。だが、「フェンスを迂回(うかい)して山を下り、公園の入り口から出入りしている可能性が高い」といい、侵入を防ぐのは簡単ではない。市は11月初めに掘り返された跡を埋め戻したが、「何度も繰り返されると対処するにも限界がある。何かいい対策があれば」と苦慮する。
イノシシによる被害は奈良だけでなく各地で見られる。専門家によると、なぜ人の住む場所に多く出没するようになったのか詳しく分かっていないが、猟師が減って個体数が増えた▽それに伴い山で餌が確保しにくくなった-などの理由も考えられるという。
奈良県内では、国の天然記念物「奈良のシカ」が生息する奈良公園にも出没し、シカが主食にする芝を荒らす被害が毎年発生している。県は24年、イノシシを追い払うためロケット花火で威嚇したり、トウガラシの辛みの成分であるカプサイシンを含ませた液体を芝生に散布したりしたが、完全に追い払うことはできなかったという。
同様にイノシシ被害に悩む新潟県上越市では今年、郊外にある「たにはま公園多目的広場」の外周約900メートルを囲む電気柵を設置。11月7日から雪が積もり始める12月上旬まで、午後7時~翌日午前6時にかけて柵に通電し、広場を閉鎖するという“力業”に出た。
同公園は、ドッグランやバーベキューエリアなどを備えた大型複合施設。休日は多くの家族連れでにぎわうが、昨年まで2年続けて広範囲をイノシシに荒らされ、芝生などの復旧に100万円を超える費用がかかることから、電気柵の設置を決めたという。
公園管理に関する調査やコンサルティングを手がける公園マネジメント研究所(大阪市)の小野隆所長(59)は「郊外と違い、住宅街の公園では講じられる対策も少なく、イノシシを完全に排除するのは難しい」と指摘。怖がって公園に近づかずにいると、「イノシシが安全と判断して行動範囲が広がる可能性がある」といい、「多くの人が公園を利用すれば、人のにおいを嫌って近寄らなくなるかもしれない」と話す。
生駒市は12月にも、公園の活用法を市民から募集する予定。市みどり公園課の担当者は「イノシシ対策になるような良案があれば、ぜひ応募してほしい」としている。