「桜を見る会」前夜祭で振る舞われたのはどこの「寿司」? 5年前から錯綜する“安倍首相とすし”情報

「 『久兵衛の寿司』言及の立民2議員に聞いた…裏取り軽視に野党からも苦言 」(産経ニュース11月19日)
桜を見る会の「前夜祭」が盛り上がっているが、そのなかで「首相とすし」についても混とんとしているのである。
整理してみる。まずこちらの記事。
「会費5000円で1万円超すし 安倍首相公選法抵触も」(日刊スポーツ11月15日)
《野党側は、同ホテル内のすし店「銀座 久兵衛」のすしなどが振る舞われたと指摘するが、ホテルのホームページによると同店の夕食の場合、にぎりは最低でも6300円。野党議員は「ニューオータニクラスで会費5000円は考えられない」と疑問を示す。》
《(立憲民主党の)安住淳国対委員長も、ホテルに照会すると「最低でも、1人1万1000円」との回答を得たと説明。費用の差額を首相サイドが補填したとすれば、公職選挙法などに抵触する恐れがある。》
なんと「銀座 久兵衛」。
私はしみじみしてしまった。実は「安倍首相とすし」について2014年に読み比べをしたことがあるからだ。新聞記事がミステリー小説のような展開になったのだ。
当時の要点をおさらいしてみる。
すし情報が錯綜したオバマ来日
2014年4月23日に、アメリカのオバマ大統領(当時)が来日した。日本に到着した夜の安倍首相との「すきやばし次郎」でのすし会食は大きな話題となった。
しかし「オバマはすしを半分残した」という報道があった(AFPほか)。そうかと思えば「すし会談、オバマ氏、14貫ペロリ」(2014年4月24日)という報道も。こちらは「Sankei Biz」だ。すし情報が錯綜していた。
さらに不思議だったのは会談の翌日の「日刊ゲンダイ」の記事。
「オバマ大統領は、よほどすしが好きなのか、きのうの夜、宿泊先のホテルオークラで『銀座 久兵衛』のすしも食べたらしい」(4月24日)という一文があったのだ。
え、オバマは「次郎」だけでなく、ホテルでも「久兵衛」のすしを食べたということか。 どんだけすしが好きなんだ。これでは「すしざんまい」である。私はこの記事を半信半疑で心に留めておいた。
すると数日後、このゲンダイの記事を見た「アッコにおまかせ!」(TBS)が「久兵衛」に取材していたのだ。
それによると、
「オバマ大統領が来日してホテルオークラに到着するや出前を頼まれ配達した。料金は1万6千円」
「ウチのすしを先に食べたから、そのあと『すきやばし次郎』のすしを半分残されたのではないか」
「ここだけの話ですが、ウチにも貸切の打診は数か月前にありました」
この証言どおりなら来日直後にホテルでまず「久兵衛」を、そのあと会食で「次郎」という時系列になる。
それにしても「久兵衛」のプライドを感じたコメントであった。このあと調べてみると2013年に次のような記事がいくつかあった。
「安倍首相、ポーランドで和食トップセールス」(日本経済新聞2013年6月16日)
《レセプションでは東京などの有名料理人らが自慢のすしや天ぷらなどを振る舞ったほか、》
調べてみると「銀座 久兵衛」もいた。
2014年のオバマ大統領との会食についても、首相サイドはホテルオークラ内にある「久兵衛」での会食を提案したが「すきやばし次郎」がモデルの映画を観たオバマ側が「次郎」を指定してきたと報道されていた。
「久兵衛」で昔話 「ハイ、シンゾー」
そんないきさつのあとの4年後(去年)。元大統領となったオバマ氏が来日したときは「久兵衛」で会食している。
「オバマ氏『ハイ、シンゾー』首相と銀座のすし店で昔話」(朝日デジタル2018年3月25日)
《「銀座久兵衛本店」の前で出迎えた安倍首相に、オバマ氏は「ハイ、シンゾー」とファーストネームで声をかけた。店の関係者によると、2人はカウンターに並び、中トロの刺し身や12~13貫のすしを食べたという。和やかな雰囲気だったという。》
4年越しの久兵衛での会食だったのである。「久兵衛」は首相のお気に入りなのだろう。
なぜ「次郎」「久兵衛」ダブルヘッダー?
ではここで話を2014年に戻す。オバマ氏は来日初日になぜ「次郎」も「久兵衛」もいきなり食べたのか。
次の仮説はどうだろうか。
「ホテルに出前を頼んだのはオバマ側ではなく、『久兵衛』に気を使った安倍首相サイドだったのではないか」説である。
会食は「次郎」になるが、その前にホテルへ出前を差し入れることによって「久兵衛」のメンツも保たれる。こう考えるとすしダブルヘッダーの不自然さが解消されるし「次郎」でオバマが半分残したという報道もなんか納得できる。
最大のオチはオバマ氏がすしの食べ比べをしたかったという「異様なすし好き」説であるが……。
こうしてミステリー小説を読むように私は「すし読み比べ」にワクワクしていた。
ところが、7カ月後の2014年11月にまたしても不思議なことが起きた。
「すきやばし次郎」の小野二郎氏と息子の禎一氏が、日本外国特派員協会での講演で「オバマ大統領は、出されたものはすべて召し上がった」と話したのである。
《「寿司を残した」とする報道については「官邸やホワイトハウスからコメントするなと言われていたので黙っていました。お出ししたものは全部召し上がって頂いて、喜んで頂いたので、ありがたく思っています」と話した。》(The Huffington Post 2014年11月4日)
なんと!
「官邸やホワイトハウスからコメントするなと言われていたので黙っていました」。この小野氏の証言の意味……。
こう言ってはなんだが、すしを食べたか食べなかったかぐらいで、なぜ官邸とホワイトハウスから口止めされなければいけないのだろうか。なぜ「すきやばし次郎」のすしを完食したと言ってはいけなかったのだろう。安倍首相と官邸サイドにとってそれだけ「久兵衛」は特別な存在ということか?
まさに「すしミステリー」。私は一人でザワザワし、そして堪能していた。
だから今回も「前夜祭」で久兵衛のすしが出ていたという報道を見て勝手に思っていたのである。関係の深い両者なら5000円という「特別サービス」もありなのだろうか、と。
ところが、ここでまた驚くべき記事が飛び込んできた。
「銀座 久兵衛」主人が「うちは出していない」
「桜を見る会 高級寿司『銀座久兵衛』主人が『うちは出していない』」(産経ニュース11月15日)
《東京・銀座の高級寿司店「銀座久兵衛」主人の今田洋輔氏は15日、産経新聞の取材に対し、首相主催の「桜を見る会」の前日に行われた安倍晋三首相の後援会の夕食会で、同店の寿司が振る舞われたとする一部報道について「うちの寿司は出していない。過去何年も調べたが、出ていなかった。報道は間違いだ」と述べた。》
エーーーー!
なんと久兵衛は「出してない」と産経に答えたのだ。
いったいどうなってんだ?
冒頭のように、産経はこの4日後に「『久兵衛の寿司』言及の立民2議員に聞いた…裏取り軽視に野党からも苦言」(産経ニュース11月19日)と続報を書いた。
ツイッターで「久兵衛」について言及した立憲民主党の石川大我参院議員は産経の取材に、
《「(当該ホテルの)宴会でのすし提供がホテル内の『銀座 久兵衛』であることは、私のパーティーの見積もりを依頼した際、ホテル側から当方の事務所が説明を受けた」などと説明した。》
ホテル側の以前の説明だと通常は「久兵衛」らしいが、「前夜祭」では「出してない」と本人(久兵衛)が答えた。
「首相とすし」記事を追っていくといつも摩訶不思議な展開になる。では一体、誰が握ったのだろう。
というわけで今回は最新のすしネタをお届けしました。
(プチ鹿島)