川で溺れ小学生男児と祖父死亡、女児2人も重体 大阪・高槻

7日午後2時ごろ、大阪府高槻市川西町3の芥川で「小学生らが溺れて意識がない」と、通行人から119番があった。府警高槻署によると、小学生のきょうだい3人と祖父の計4人が救助されたが、男児と祖父は搬送先の病院で死亡が確認された。女児2人も意識不明の重体。川には深さ約2メートルのくぼみがあり、同署はこのくぼみで溺れたとみて調べている。
同署によると、亡くなったのは、城津(しろつ)国清さん(73)=高槻市芝生町2=と、孫の小学2年、岸下(きしした)太紀さん(7)=同府茨木市下穂積4。小学6年(11)と4年(9)の姉2人が意識不明。きょうだい3人は6日から城津さん宅に泊まり、事故当時は4人で川遊びに来ていた。
現場付近は親水公園として整備されており、川幅は約20メートルで遊泳は禁止されていない。河川敷から階段で川に下りられる構造になっている。川の魚を紹介する看板が階段付近に設置されており、「芥川の魚たちを探してみよう」とも記されていた。危険を呼び掛ける看板は現場付近になく、約50メートル下流にある。
川岸付近は数十センチの浅瀬だが、川の中央に深さ約2メートルのくぼみがある。4人が発見されたのは、このくぼみ付近だった。
目撃証言によると、城津さんは孫3人を助けようとして溺れたとみられる。女児2人は通報前に通行人が救助したが、城津さんと岸下さんは約1時間後に川底で見つかった。【伊藤遥、藤河匠、堀祐馬】
くぼみの危険性知らせる看板なし 問われる安全対策
現場付近の川に深いくぼみがあることは近くの住民らの間で知られていたが、危険性を知らせる看板は設置されていなかった。川を管理する大阪府は川底を平らにする工事を予定していたが間に合わなかった。今後、安全対策が十分だったかが問われそうだ。
現場の川に詳しい高槻市立自然博物館の高田みちよ・主任学芸員(46)によると、現場の上流にある階段状の堰(せき)の影響で水流が強くなるため、川底の土砂が削られてくぼみができやすい構造になっている。特に、事故の数日前には激しい降雨があり、高田さんは「底が見えないくらい水が濁り、非常に危ない状態だった」と指摘する。
近所の女性も「子供だけで遊ぶと危ないので、しょっちゅう警察に通報していた」と証言。近くの小学4年の男児(9)は「学校では危ないので川で遊ぶなと注意されていた」と話す。
大阪府茨木土木事務所によると、流域では8月下旬から川底の土砂を取り除き、平らにする工事が始まっていたが、現場付近は未着手だった。担当者は「現場の川底が深くなりやすいことは分かっていた」と話す一方、「危険を認識していたかどうかは、何とも答えられない」と言葉を濁した。
救助現場は緊迫を極めた。
現場を目撃した小学生の男児によると、小学生のきょうだい3人が川の中でビーチボールを使ったり、泳いだりしていたが、気づくと手足をバタバタさせて溺れているように見えた。川岸では、祖父とみられる男性が「大丈夫か」と何度も叫んだが反応がなかった。男性も川に入って助けようとしたが、次第に男性の姿も見えなくなったという。
近所の女性会社員(42)はサイレンの音に気づき、現場に駆け付けた。消防車や救急車、パトカーなど10台以上が集まり、水中に潜って捜索していた。下流にも範囲を広げたが、現場付近で男性と男児が引き揚げられ、ぐったりした様子で運ばれていったという。女性は「雨の影響なのか、いつもより流れが速く感じた」と声を震わせた。【野田樹、土田暁彦、松本光樹】
児童らが亡くなった近年の主な水難事故
2013年7月 秋田県男鹿市の海岸で9歳と5歳の兄弟と助けようとした男性(50)が死亡
8月 鹿児島県屋久島町の永田川で小1女児と父母の3人が流され死亡
14年5月 新潟県上越市の海岸で子供3人が溺れ死亡、助けようとした父ら2人も死亡
6月 東京都江戸川区の新中川で川遊び中の男性(20)と少年(17)が溺れ死亡
8月 神奈川県山北町のキャンプ場の川が増水し、流された車に乗っていた母子3人が死亡
15年10月 沖縄県読谷村の海岸で4歳の女児と10カ月の弟が死亡
16年6月 岐阜県羽島市の木曽川で水上バイクに衝突された3歳と10歳の兄弟が死亡
17年8月 福岡県古賀市の海岸で流された父子3人と助けようとした男性(49)が死亡
9月 岐阜県美濃加茂市の木曽川支流でブラジル国籍の男性(32)と長男(1)が死亡
18年7月 福岡市東区の沖でシュノーケリング中の男子大学生2人が死亡
19年8月 滋賀県高島市の漁港で船着き場から飛び込んでいた男子大学生2人が死亡