11月11日、中国では「独身の日」と呼ばれる日にEC上で行われる「ダブルイレブン」商戦。1日だけでけた外れの売り上げを記録するため、日本でも毎年話題になっている。主力ECであるアリババグループのT-Mallの同日売り上げは約4兆1000億円(約2684.4億元)と、初めて4兆円を突破。中国のデータ調査会社によれば、他のEC大手を合わせた推計も同日だけで約6.3兆円(4101億元)に達した。
例えば、日本のヤフーの「1年間」(2018年度分)でのショッピング事業の取扱高が7692億円であるのと比較しても、その規模は破格と言える。このダブルイレブン、背景には中国EC独特のマーケティング構造があるようだ。
中国における「独身の日」は「『1』が並ぶ日付に、彼氏・彼女のいない大学生が集まり楽しむ日として始まった」とされるイベントだ。これに目を付けたアリババグループが09年、「独り身の寂しさをネットショッピングで紛らわそう」などとアピールしてECでセールを始めた。
ただ、トレンドExpress(東京・千代田)で中国マーケット分析を手掛ける森下智史さんによると、中国ではこの日に対する「独身」のイメージは割と薄れてきており、EC上で大規模なセールが繰り広げられるイベントとして幅広く盛り上がっているという。今は京東(ジンドン)など他の大手中国ECも参加する。
欧米でも小売りがセールを行う日である「ブラックフライデー」などが存在する。ただ、「オンライン発祥で、ECで新しい商戦を作り出す施策は中国独自」(森下さん)。インターネットの発達前にリアル店舗の流通網が既に整備されていた日本や欧米と違い、その段階を経ずに一足飛びでECが浸透した、中国という巨大市場ならではの現象、とみる。
人気のカギは「ライブコマース」
ちなみに、中国のデータ調査会社・星図数据が集計した今年の「売れたジャンルのランキング」によると、1位は携帯・デジタル製品。2位に家電、3位コスメと続く。森下さんによると、スマートフォンのように「普段は高いが値下げ幅が大きい」商品や、おむつや化粧水のように「普段使いする上に買いだめできるもの」が売れ筋になりやすいという。
「ダブルイレブンは企業がキャンペーン効果を狙い、1年間で最も商品が安くなる、“薄利多売”のセール。当然、消費者は安値や付いてくる『おまけ』、クーポンなどに着目する」(森下さん)。
特に今年のダブルイレブンをより盛り上げた要因として大きいのが「ライブコマース」だ。インフルエンサーと呼ばれるネット上の有名人が、商品紹介する動画をEC上でライブ(生)配信する。日本でもある程度浸透してきたが、中国の消費者への影響力はそれをはるかに上回る。
トレンドExpressによると、ライブコマースは18年ごろからダブルイレブンで本格的に活用されるようになった。例えば人気配信者の李佳(「王」に「奇」)さんが今回のダブルイレブンの「タオバオ・ライブ」で行った約6時間半のライブ配信は、約3700万人のユーザーが視聴したという。こうしたライブコマースを手掛ける中国のインフルエンサーは、日本だと「Hikakin」のような超人気ユーチューバーに相当すると言える。
前夜祭にはテイラー・スウィフトや花澤香菜も
さらに、アリババが毎年開催、動画を配信しているダブルイレブンの「前夜祭」には、18年ではタレントの渡辺直美さんが、今年は歌手のテイラー・スウィフトさんや人気声優の花澤香菜さんらが出演した。中国の消費者に買い物をまるで番組のように楽しませる「消費のエンタメ化」も、この商戦を盛り上げる大きな要因と言える。
「中国市場を狙う企業の中で、ダブルイレブンに何もしないところはあり得ない」(森下さん)とされるこの大商戦。実際、アリババの発表では、T-Mallの越境EC(天猫国際)における国・地域別ランキングで日本勢がトップになり、売り上げ1億元(約15億円)超えのブランドには資生堂やユニクロなどが並んだ。日本企業にとっても引き続き目が離せない商戦と言えそうだ。