感謝の思いを歌に乗せ ミトコンドリア病と歩む作詞家小川さん 津で24日ライブ

脳や筋肉の機能が低下する国指定の難病「ミトコンドリア病」を患いながら、作詞に励む女性がいる。津市を拠点に活動するバンド「Link of dream(リンク・オブ・ドリーム)」に所属する小川菜々美さん(22)=津市河辺町。「たくさんの人に支えてもらった私だからこそ届けられる歌がある」。感謝の思いを歌に乗せて届けようと、24日のライブを前に意気込んでいる。
ミトコンドリア病は、細胞の中でエネルギーを作り出すミトコンドリアの働きが落ちることで起こる難病。脳の萎縮や全身の筋力、心機能の低下などが特徴だ。
発症したのは6歳だった。筋力は徐々に落ち、移動で車椅子を使うことが多くなった。舌も動かしづらくなり、会話に苦労する。「自分の気持ちを伝えたいけれど、瞬時に言葉を発せられないのがつらい」
そんな小川さんにとっての運命の出会いは、特別支援学級に通う12歳の時に訪れた。夏休みの宿題で作った詩に、担任の教諭がメロディーを付け、歌にしてくれた。担任は同バンドでドラムを担当するメンバーだった。
詞を作る楽しさに目覚めた小川さんは、次々に新たな詞を生み出した。「いつか私の書いた詞で歌ってほしい」。特別支援教育に携わる教員らが中心となって活動する同バンドにその願いが伝わり、小川さんの作った詞が取り入れられるようになった。
やがて演奏でもメンバーに誘われるようになった小川さん。18歳でライブに初参加し、金属の細いパイプをつるした風鈴のような楽器、ウインドチャイムを奏でた。病気による小脳の萎縮で、リズムを取るのは苦手で、演奏に自信はなかった。しかし昨年、ライブを見た人から「心が洗われた」などの反響があり、励まされた。音楽にのめり込むと詞を書くペースも上がり、最近では月に1曲は作詞を進める。

今回のライブで披露する曲「With~お母さん~」には、「できないことは、できなくてもいい」と支え、励ましてくれた母留美さん(53)への感謝の思いを記した。「私が生まれてから ずっとずっと私のお母さん お母さん生んでくれてありがとう お母さんの娘で幸せです」
自分を苦しめてきた病気だが、それがあったからこそ音楽や多くの人との出会いがあった。「この病気は神様がくれた だから私は頑張れる」。この曲の詞には小川さんの思いが詰まっている。
24日は同バンドとして今年初の単独ライブとなる。本番を前に小川さんは「たくさんの人に支えてもらった私だからこそ届けられる歌がある」と意気込みを語っている。
ライブは津市桜橋2の三重県教育文化会館で24日午後4時半から(開場は午後4時)。大人1000円(学生は無料)。売り上げは被災地復興支援などに寄付される。【谷口豪】