愛媛大地球深部ダイナミクス研究センター長の入舩(いりふね)徹男・特別栄誉教授(65)=高圧地球科学=は、小学生向けの絵本「地球の中に、潜っていくと…」(関口シュン絵、福音館書店刊)を出版した。センターが開発した世界一硬くて割れにくい「ヒメダイヤ」を使った乗り物で地球の中心へ旅をする冒険物語。「生きている地球」を感じ取ってほしいという。
同書は1985年に創刊された「月刊たくさんのふしぎ」の12月号(第417号)。地球の中の「ふしぎ」を、アジアで初の国際高圧力学会長を務めた世界的権威の入舩さんが分かりやすく描いた。
まず、地球科学研究者の「おじいちゃん」がハルキ、アユの孫二人と「ダイヤモンド号」で日本海溝へ潜る。少し黄色っぽいボディーは「ヒメダイヤ」の色を意識している。
地球表面に浮かぶプレートのうち、「海洋プレート」と「大陸プレート」が重なって潜り込む割れ目が日本海溝。「海洋プレートは重いから、重力によってゆっくり下に沈んでいる」。3人は沈むプレートに乗って地球の中心へ。想定では往復1億年になるが、タイムマシンに乗ってテンポよく進む。
「地球の中は暗闇の世界ではない。まぶしいくらいの明かりの世界がある」
実験室で最高25万気圧、3000度の状態をつくり出し、ヒメダイヤを合成して、地球深部の物質の姿を探ってきた入舩さん。研究成果から「地球のマントルはガーネットなどの宝石ででき、中心の核には金や白金の貴金属が含まれる。地球の中は宝の山」といえるという。
物語でも火山や地震、磁場の仕組みなどを学びながら地下5150キロ(5000度、330万気圧)の地球内核へ。水晶のような構造の鉄の結晶が並ぶのも、これまでの知見に即した風景だ。
本の完成まで約2年。地球の中に進むにつれて変わる配色も、超高圧、高温での実験結果をできるだけ忠実に反映した。本体700円。【松倉展人】