国宝の悩み 見学者増の旧開智学校、耐震・防火対策が課題 松本

明治初期の学校建築様式を今に伝える旧開智学校校舎(長野県松本市)について、国の文化審議会が国宝に指定するよう文部科学相に答申して半年。9月30日に官報告示されて正式に国宝になり、観光名所として見学者が増えている。一方で、首里城(那覇市)の火災を機に、貴重な文化財を火災や災害からどう守るかが改めて問われており、旧開智学校でも耐震補強や防火対策が課題になっている。【小川直樹】
「祝国宝指定 旧開智学校校舎」。JR松本駅を降り、構内から駅前の広場に出ると鮮やかなブルーの横断幕が目に入る。駅から松本城へ向かう市街地の道沿いにも、同じデザインのフラッグが途切れずに飾られ、街にお祝いムードが漂う。
旧開智学校は国宝・松本城から徒歩約10分の近距離にあり、両方を周遊する観光客は多い。市によると、国宝指定の答申翌日の5月18日から今月17日まで、旧開智学校の見学者は9万3569人で、前年同期より3万3000人も増えた。
洋風と和風を融合させた独特の「擬洋風建築」が目を引き、展示室では明治以来の学校教育の歩みも学ぶことができる。ただ、完成が1876(明治9)年と古く、10月の台風19号で外壁の一部が剥がれる被害が出た。
懸念されるのが地震だ。市が2016、17年度に行った旧開智学校の耐震診断では、「おおむね震度6強から7の大地震で倒壊の危険性がある」という結果だった。緊急に修理を要する極端な危険箇所はないとして、一般公開は今も続けられている。しかし耐震補強は避けて通れない。

現在、市は「あがたの森公園」にある国指定重要文化財・旧松本高等学校講堂(同市県3)の耐震補強工事を行っている。さらに松本城、旧開智学校の補強工事を行う方針だ。
旧開智学校については文化庁と協議して保存活用計画の策定を進めており、計画に耐震補強を盛り込む。工事着手や完了の時期は未定だが、松本市立博物館の木下守館長は「順番待ちでは時間がかかる。文化庁の意向もあり、旧開智学校も含めて、補強は早まる傾向にある」と見る。補強工事がどの程度の規模になるにせよ、その間、休館せざるを得ない時期は出るという。
加えて、パリ・ノートルダム大聖堂や首里城など貴重な文化財で火災が起き、旧開智学校や松本城の防火対策も課題に浮上した。
市は松本城では26年度に進める耐震補強工事と並行し、天守内にスプリンクラー設置を検討する。旧開智学校でもスプリンクラー設置は俎上(そじょう)に載っているが、旧開智学校の中には教育関係の紙の資料が多くある。スプリンクラーは初期消火には有効だが、誤作動が起きた場合、資料が水にぬれるリスクもある。木下館長は「スプリンクラーが一概に有効と言えるかどうか、結論はすぐには出ない」と慎重な姿勢を示している。