11月2日、89歳で急逝した日本鯨類研究所(東京都中央区)の名誉顧問、大隅清治氏は半世紀以上にわたり、世界の鯨類研究の発展に貢献してきた。大隅氏は7月下旬、産経新聞と英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」とのインタビューに応じ、今年7月に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退した日本が進むべき道やクジラと人間の関係を語った。捕鯨は自然の生産力を活用する営みだとし、「クジラを食べましょう」とのメッセージを残した。上下2回に分けて掲載するインタビューの後半は以下の通り。(聞き手=JAPAN Forward編集長、内藤泰朗)
商業捕鯨でなく持続捕鯨
--いよいよ商業捕鯨が再開しました。
「私は、実は商業捕鯨という言葉が好きではないのです。誤解を与えていると思います。商業主義でクジラを捕る、お金もうけのためにやっているかのようなイメージを、反捕鯨の人たちはつくっている。しかし、そうではないんです。クジラという大切な資源を潰さないように持続的に利用するというのがこれからの捕鯨なのです。人間が管理することが必要なのです。捕鯨を止めれば、それですべての問題が解決することはないのです。だから、持続捕鯨と言った方が的確なのではないかと思います。決して、商業捕鯨ではないのだということです」
「これからは利潤を追求するような捕鯨ではないと思います。かつて欧米は、鯨油をとるために本当に無駄な捕鯨をしていました。これからはそんなことはあり得ないのではないですか。商業捕鯨の復活という表現で言われますが、私はしっくりとこないのです。日本政府まで、商業捕鯨の再開という言い方をしている。私は違うと思います。誤ったイメージを植え付けてしまいます」
--なるほど。
「ぜひ、『持続捕鯨』という言葉を広めましょう。お願いします」
海に放し飼いされた牛
--欧米の中には、クジラを神聖視する向きもありますが。
「私は、クジラを魚だと思っています。私は、クジラを知性の高いほ乳類だという人たちの言うことが理解できないですね。私たちの理解とは合いません」
「だいぶ前ですが、ブエノスアイレスでの会議に参加した際、友人の案内で郊外をドライブしました。パンパという草原地帯に、牛がポツンポツンと(適正な頭数で)いるんです。牧場主は、増えた分を減らして、そうやって暮らしていると聞きました。いまの捕鯨は、まさに海に放し飼いされた牛ではないかと思うんです。クジラも海のプランクトンや魚を食べて増えていく。適当な数を間引いているのが現在の捕鯨ではないかと思うんですよ。以来、私は『クジラは海に放し飼いにされた牛である』と言っています」
「放牧された牛や捕鯨されるクジラは、普段は自由に暮らしていてたまたま運の悪い奴が、交通事故に遭うような確率で人間に捕まるわけです。圧倒的に大多数のクジラは、その一生をまっとうするのです。僕は、自由なクジラの方が幸せだと思いますよ」
--だからこそ、クジラの数や生態をちゃんと調べなければならないということですね。
「そうです。エゾシカだって今、増えすぎてコントロールしなければならなくなっているでしょう。増えた分を間引いて利用していくということが、環境を破壊しないための最良の方法なのです。クジラにしても牛の放牧にしても、増えた分は間引きながら、人間が管理していくということが重要なのです。捕鯨は、自然の生産力を活用する一つの手段であるということなのです」
IWCはつぶれる
--もし、人間が管理せずに自然に任せていたらどうなりますか。
「どうでしょう。よく言われるのは、クジラは大量の魚を食べるので、漁業に影響が出るということ、そして、死んだクジラが浜に打ち上げられた後の処理でしょうか。クジラが増えていることもあり、最近、打ち上げられるクジラの数が多くなっているのですが、クジラは大きいのでその処理が大変なのです」
--そもそも、捕鯨を管理するためにIWCができたのではないですか。
「そうなんです。しかし、反捕鯨国がIWCに入ってきてねじ曲がってしまった」
--IWCは、これからどうなるんでしょうか。
「つぶれるんじゃないですか。反捕鯨団体となったわけですから、IWCの存在意義はなくなりました」
--世界の人へのメッセージは?
「クジラを食べましょう、ということでしょうか」(おわり)
【プロフィル】大隅清治(おおすみ・せいじ) 享年89。昭和5年、群馬県生まれ。陸軍幼年学校49期。ニタリクジラ研究から鯨類研究の世界に。東京大学大学院博士課程修了後、昭和40年代から国際捕鯨委員会(IWC)会合に連続して出席、鯨類学研究の発展に尽力した。平成7年から16年まで日本鯨類研究所理事長。平成14年に勲四等瑞宝章、18年にはノルウェー王国功労勲章を受章した。著書に、『クジラは昔 陸を歩いていた:史上最大の動物の神秘』(PHP文庫)、『クジラと日本人』(岩波新書)、『クジラを追って半世紀-新捕鯨時代への提言-』(成山堂書店)など。
※インタビューの英語バージョンは後日、日本の素顔」を世界に発信する英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」にもアップする予定です。