これからの忘年会シーズン、幹事の人は店選びに頭を悩ませることも多いのではないだろうか。人気の店は予約も取りづらく、「取りあえず」と予約だけ先にする人もいるはずだ。この「取りあえず予約」が、飲食店を悩ませている「無断キャンセル」につながりかねない。この無断キャンセルを、「軽いもの」だと考えてはいけない。逮捕者も出始めている。
警視庁の発表によると、11月11日、飲食店の無断キャンセルをしたとして逮捕者が出た。罪状は「偽計業務妨害」容疑。6月に都内の飲食店へ対し、1人につき1万円以上するコースを17人分、架空の予約をして損害を与えたとされている。
逮捕となったことで話題になった無断キャンセルだが、今回のケースは氷山の一角に過ぎない。2018年に経済産業省とサービス産業の高付加価値化に向けた外部環境整備等に関する有識者勉強会が発表した「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」によると、飲食店における無断キャンセルの被害額は年間で2000億円にも達するとされている。
実際に、同様のケースは他にも起こっている。例えば、奈良県にあるとんかつ店「まるかつ」(奈良市)は、同店のTwitterアカウントで11月12日、電話で弁当の予約をしたにもかかわらず、受け取りに来ない「いたずら予約」の被害に遭ったと発信している。
店舗に電話して担当者に話を聞いたところ、こうしたケースは年に数回あるのだという。多いときには20個ほどがいたずらで予約され、スタッフに配ったり、割り引いて販売したりしている。対策については、電話番号や氏名を控えることを挙げたが、「あまりやり過ぎるとお客さまの不便にもつながるので、なかなか本腰を入れるのは難しい」と担当者。確かに、客商売である以上、店舗からあれこれとお客に尋ねることは、なかなか難しいケースもある。
無断キャンセルが少なからず存在する一方で、これまでなかなか問題化しなかった背景には、飲食店側がキャンセルされたことを「恥」だと考えるような文化があるからだという。
無断キャンセルが起こってしまう背景
「飲食店側が無断キャンセルを大きく問題化しづらいのは、キャンセルされたことが『恥』と考える文化があるからだ」と話すのは、無断キャンセルに関する保証サービスや後払いサービスを展開しているGardia(東京都港区)の小山裕社長だ。
飲食店は、キャンセルされた理由を「自店の料理や味が劣っているからだ」と受け止める傾向があり、なかなか表に出しづらい風土なのだという。また、無断キャンセルがあったことを大々的に表明することで、「うるさい店だ」とお客に思われるリスクもある。しかし、SNSなどであらゆる人が声を上げることが一般的になるにつれ、2年ほど前から声を上げる店も増えてきているという。
一方で、なぜ人は無断キャンセルをしてしまうのか。小山氏は「うっかりしている人が、予約したままキャンセルせずに当日を迎えてしまったというケースも確かにある」としつつも、「予約が『契約行為』であるという認識が薄いのでは」と指摘する。大ざっぱにいえば、飲食店を予約し、店が了承した時点で「予約」という契約が成立する。この契約を解除せずに、つまり無断キャンセルして店舗に損害が発生した場合には、予約した人はその損害を賠償する必要性が生じるのだという。こうした認識が薄いからこそ、軽率に無断キャンセルをしてしまう人が多い。また、「予約サイトの発達やスマートフォンの普及で、簡単に予約しやすくなっていることが無断キャンセルの
心理的ハードルを下げてしまっている」とも話す。
小山氏によると、Gardiaが保証契約を結んでいる事業者は、飲食業やサブスクリプションサービスを提供している企業など全部で数万にのぼる。利用者はGardiaに対して月額の保証料を支払い、何かあった際にはGardiaに連絡をする形を取る。毎月10~20件ほど無断キャンセルが発生しているという。では、こうした無断キャンセルにどのように対応しているのだろうか?
「取り立て」はどのように?
無断キャンセルが発生すると、いったん事業者からキャンセルした人へキャンセル料の保証を求める。それでも回収できない場合には、事業者がGardiaへ申請を行い、審査を経てGardiaが取り立てを請け負う。この際に、債権(求償権)がGardiaに移る。以降は、予約時に回収した電話番号やメールアドレスを通して、一定期間を定めて連絡を行う。そのため、Gardiaと契約している事業者では必ず、予約時に個人情報の扱いに関して明示しているという。ちなみに、Gardia内には数人からなる「督促部隊」もあるのだとか。
小山氏は「無断キャンセルの保証を行うだけでなく、そもそも無断キャンセルが発生しないような仕組みづくりが重要」と話す。では、無断キャンセルを防ぐにはどのようにすればよいのか。小山氏は、リマインドの連絡をすることや事前決済を挙げる。特にリマインドは単純なことだが、こうしたちょっとしたことでキャンセルに対する意識を高めることができるのだという。
Gardiaでは今後、一度無断キャンセルした人の情報から、リスクを判定したり、悪質なお客について注意喚起をしたりする制度構築を検討している。小山氏は「われわれは無断キャンセル保証だけをやっているわけではない。こうしたサービスを通して、新たな時代の信用情報機関となることを目指している」と話す。
Gardia以外にも、無断キャンセルに関する取り組みは広がる。リクルートライフスタイルが運営する検索予約サービス「ホットペッパーグルメ」は、複数店舗を予約している人に対してアラートを発したり、来店予定日の数日前にリマインドを送ったりしている。また、一定回数以上無断キャンセルをした場合には新規での予約ができなくなるという。
また、19年7月に弁護士の北周士氏が立ち上げた「ノーキャンドットコム」というサービスも登場。同サービスでは基本料が無料で、無断キャンセルが発生し、キャンセル料を回収できた際に一部を手数料として徴収する仕組みだ。11月22日現在、76件、200万円超の回収依頼がかけられている。
各店は、自らで努力するだけでなく、こうしたサービスを交えて悪質なキャンセルに備えたい。