今月16日、合成麻薬「MDMA」を所持していたとして麻薬取締法違反容疑で、警視庁組織犯罪対策部に逮捕された女優の沢尻エリカ容疑者(33)。26日に最初の勾留期限を迎えたが12月6日まで10日間延長することが決定し、今後もその動向に注目が集まっている。
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思い返せば2019年は、有名人の薬物逮捕者ラッシュの様相となった。3月に俳優のピエール瀧、5月に「KAT-TUN」の元メンバー・田口淳之介とその“内縁の妻”で元女優の小嶺麗奈が逮捕され、いずれも有罪判決となっている。そして今月に入ってからも、元タレント・田代まさしを皮切りに、プロスノーボード選手・国母和宏、金融トレーダーの「KAZMAX」こと吉澤和真ら著名人が相次いで違法薬物所持で逮捕された。
ここまで警察が薬物の取り締まり強化、そして有名人の集中的な摘発に乗り出しているのはナゼなのか? 沢尻エリカの逮捕をきっかけに、改めて関心を集めているこの疑問について、ある捜査関係者はこう語っている。
「『来年に控える東京五輪に向けて、今年中に日本から違法薬物を少しでも一掃したい。その見せしめとして、薬物使用の疑いがある芸能人の摘発を行なっている』というのが各メディアの大方の見方でしょう。もちろんそれも一つの理由ですが、実は今年6月に起きたクスリにまつわる大事件が、警察を本気にさせた大きな要因となっているのです」
警察を本気にさせたある事件。それは、日本がアジアにおける「クスリの大保管庫」となっている、という恐るべき現実を示唆するものだった。
事件が明るみに出たのは、今年6月5日。静岡県南伊豆町の海岸で、不審な小型船の中からおよそ1トンにも及ぶ大量の覚せい剤が発見されたのだ。
警視庁組織犯罪対策部5課によれば、数年前から「不審な船が港をうろついている」との通報を受け、覚せい剤密輸事件の疑いがあるとみて内偵捜査を開始。その結果、中国人の男たち7人が覚せい剤を密輸をしていることが判明し、現場で荷下ろし作業をしている彼らの身柄を拘束したという。
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この時摘発された覚せい剤は香港から流入したものとされているが、驚くべきはその量である。「1トン=1000キログラム」という量は、日本全国の覚せい剤の年間押収量に匹敵する(平成29年の年間押収量が1159キログラム)だけでなく、平成28年時点で過去最大量の摘発とされていた597キログラムを2倍近く引き離している。
一度の薬物の押収量としては覚せい剤だけでなく大麻なども含め日本の薬物史上過去最大量であるだけに、その末端価格も「600億円分」と、これまた過去最高額である。
ただ、気になるのが1トンもの大量の覚せい剤をどう売りさばく予定だったかである。
「1トンもの覚せい剤なんて、本来日本に入ってくる量とは考えにくい。犯人グループらの素性がまだ分からないので何とも言えませんが、少なくとも覚せい剤を1トンも仕入れる日本のヤクザなんていないでしょう。もしこれほどの量の覚せい剤が日本に流通したら、現在の需給関係のバランスが崩れ、市場価格は下がって大損するわけですから」(前出の捜査関係者)
前述の通り、違法薬物をした有名人の摘発が相次ぐたびに各メディアで大々的に報じられるため、日本中に薬物汚染が広がっている印象を受けるが、諸外国と比べると、その流通量は少ないというのが現状だ。ヤクザ自身も、今のきわめて限られた量以上のクスリをバラまけば、末端価格の維持ができず、警察の捜査も今以上に激しくなり、仕事がやりづらくなることを理解している。
そこで話は戻るが、この事件の真相として推測されうるのが、日本が「クスリの大保管庫」になっている、ということだ。
もちろん、1トンの覚せい剤は日本のヤクザに売り渡される可能性はある。しかし、逮捕されたのがいずれもチャイニーズマフィアと疑われる中国人たち、そして香港から覚せい剤が密輸されていたことから、日本を一時的なクスリの保管場所として密輸し、日本を起点に別の国々に発送しようとしたのではないか、という見方が大勢であるようだ。
それではなぜ、日本が「クスリの大保管庫」として選ばれるのか。それは日本が、世界的に見て違法薬物に対する刑罰がきわめて軽いからだ。
沢尻エリカ容疑者は、都内の自宅で家宅捜査が行われた際に白いカプセル錠が見つかり、のちに鑑定でMDMAと発覚。逮捕後、「私の物に間違いありません」「10年以上前から違法薬物を使用している」と供述し、容疑を認めている。
ただ一方で、尿検査ではMDMAを含む違法薬物の成分は検出されておらず、使用での立件が難しいことから、本人の反省など情状酌量から起訴猶予になり、釈放される可能性も高い。また、起訴処分になっても初犯ということで、懲役1年~1年半、執行猶予3年ほどで済むという見方が出ている。
それどころか、女優復帰の可能性すら日本ではある。2009年8月に逮捕された酒井法子が、執行猶予明け後すぐに舞台出演したことがその例だ。実際、情報番組やワイドショーでは「沢尻エリカの復帰がどうなるか」といった話題がすでにあがった。
このように、日本国内における麻薬取締法違反の場合、初犯だとほとんどが執行猶予で済むことが多く、それどころか2回目の違反でも執行猶予となったケースもあるほどだ。少なくとも日本は「違法薬物で死刑や終身刑になることはありえない」国なのである。
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ところが世界はまったく違う。今回捕まった犯人たちの母国である中国は、違法薬物に対して非常に厳しい姿勢をとっている。過去、日本の暴力団が中国で覚せい剤の密輸を行った罪で逮捕され、死刑判決を受けたこともあることから、1トンという覚せい剤の密輸など、中国であればまず間違いなく死刑となるだろう。
その点、日本国内で覚せい剤が見つかっても、日本の法律が適用されるため、死刑になることはまずありえない。そのため、クスリの密売人たちは日本を安全な「クスリの大保管庫」として使っていると考えられるのだ。
ただ、さすがに警察も1トンもの覚せい剤を目の当たりにて、中国密売人たちのナメっぷりに堪忍袋の緒が切れたことだろう。しかも新元号・令和を迎えて、すぐ翌月のことだっただけに、自身らのメンツを潰されたとも強く感じたはずだ。
一連の有名人の薬物逮捕者ラッシュにはこうした背景が伺える。警察の違法薬物の取り締まりは、年末にかけて一層強くなると言われているが、次に逮捕されるのは果たして……。