未だに「会うことしか考えていない」金融営業を変える お金のデザインが匿名でのお金の相談を始める理由

投資のロボアドバイザーサービス「THEO」を提供するお金のデザイン(東京都港区)は、子会社の「400F」を通じて、対面での金融相談事業を強化する。スマホを使って簡単に少額から投資ができ、運用もおまかせできるのがロボアドの特徴。ネットで完結することが強みとも受け取れるが、なぜ、対面での金融相談に乗り出すのか。

投資未経験者の何がハードルなのか
お金のデザインの中村仁社長は、THEOを運営したことであることに気づいたと話す。「投資の第一歩はすごく難しい。ネットだけに預けるのは、資産の10~20%が上限だということが分かった。(ロボアドは長期分散積み立てなので)本来はコア資産になるはず。なのに、仮想通貨やテーマ投資は盛んで、コア資産に投資されない」

その理由として、最初の一歩として適切なアドバイスを得られていないのではないか、というのが中村氏の考えだ。ユーザーからは、お金について相談したいという声もすごく多いというが、安心して相談できる専門家を見つけられていないというのが金融業界の現状だ。

誰に相談したらいいかわからない
金融広報中央委員会の調査によると、ユーザーがお金に関する知識や情報を得ているのは、圧倒的に金融機関からだ。しかし、「どこから情報を得たいか」と聞くと、その比率は大きく下がる。現実と理想のギャップが最も大きいのは、「特定の業界に属さない中立的な団体から」。つまり、中立的なアドバイスを得たいと思っているのに、実際は商品を販売している金融機関からの情報に頼っている。

「金融機関を選ぶ理由は、一番が『近いから』。ユーザーは、付加価値を感じていない。中立的な団体から情報を得ているのは8.1%だが、本来としてはここが最も多く期待されている」(中村氏)

1年前に「お金の健康診断」というサービスを立ち上げ、イベントなどで入力してもらいFPが5分だけコメントするというトライアルを行ったところ、「満足度が100%だった。これには非常に驚いた」と中村氏。

「ライフプランなんてどこでもやっているし、やってもしょうがないんじゃないかという先入観があった。ところが、お客さんが一番悩んでいるのはここではないか」

背景には、業界特有の縦割り構造があるのではないかと見る。「金融相談の専門家としては、IFA(独立ファイナンシャル・アドバイザー)やFP(ファイナンシャルプランナー)、保険相談員などがあるが、だれが専門家なのかどうやって相談したらいいのか分かっていない。自分にあった専門家も分からない。分断されていたのがお金の専門家との出会い」(中村氏)

匿名で会わずに相談できる「お金の健康相談」
そこで「お金の健康相談」を強化する。ユーザーの漠然としたニーズに基づいて、適切な専門家とマッチングする仕組みだ。匿名のまま、悩みや収入、家族構成、資産状況などを入力すると、アルゴリズムから専門家とつなげる。チャットで悩みを相談し、具体的なやりとりをしたい場合は、連絡先などを明かして対面でのやりとりにつなげる。

「ほとんどのサービスでは氏名や電話番号などを入れさせるので、そのあと勧誘があるんじゃないかと不安になる。金融業界は、未だに会うことしか考えていない。会えばなんとかなると思っている。消費者が辟易していることに気づいていない。そこで、仮面をかぶったまま金融データを明かして、気軽に相談できるようにした」(中村氏)

すでに2万人がサービスを利用し、マッチングする先のIFAやFP、保険相談員など相談先も、40社、500人を超えた。

今後、金融事業プラットフォームを提供する日本資産運用基盤と組み、IFAやFPが適切なアドバイスを行える機能を提供していく。ポイントとなるのは、機械学習によるテキスト解析だ。チャット内容などを分析し、ユーザーのニーズを分かりやすく提示することで、アドバイザーの効率を上げていく。

ロボアドTHEOとの連携は、しばらく先
「お金の健康診断」のビジネスは、マッチング先である専門家から月額料金を取るモデルとなる。現状、ロボアドのTHEOとの関係はない。「現状ではマッチングのプラットフォーマーが商品を持つと利益相反が起きる」(中村氏)のがその理由。

具体的な金融商品を持っているところがアドバイス事業を行うと、どうしてもその金融商品をユーザーに勧めがちになる。それはユーザーが求めている、中立的なアドバイスを損なう。

将来的に、THEO内で複数の金融商品を取り扱えるようになっていった場合は、利益相反を起こすことなくシナジーを得られるという考えだ。実際、預かり資産が上位5社で17兆円を超えるロボアド先進国である米国では、ロボアドに人間による相談サービスを組み合わせることで、価値を強化してきた。

米チャールズ・シュワブのロボアド「Shwab Intelligent Advisory」では、2万5000ドル以上の運用をしている人に、人間のアドバイザーへの無制限の相談が可能。業界4位のベターメントの「Betterment Premium」では、手数料を多く払うと公認FPに相談でき、プレミアム以外でもチャットでの相談を可能にしている。

単なる資産の運用から、専門家に継続的にお金の相談ができる環境へ。急速に変化する金融業界で、有人アドバイスの価値が見直されようとしている。