マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原清志副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。
・CASEは「独自部分だけでも、クルマ1台分の開発費がかかってます」 マツダ藤原副社長インタビュー(1)
・為替は「北米に工場を造っても、ほとんど変わらない」 マツダ藤原副社長インタビュー(2)
池田 さて、今回の四半期決算で最大の波乱はラージプラットフォームの延期ですよね。これは万全の状態に仕上げて、価格カバレッジを上げるために、準備がもっといるんだというご説明だったと思うんですが。
藤原 いや、価格カバレッジを上げる、とは言ってないんですけどね。今回遅らせることにした一番の理由は、プラグインハイブリッド(PHV)です。ヨーロッパのCO2規制(CAFE)とか、米国の温室効果ガス規制(GHG規制)とかを考えると、PHVが必須になってくる可能性が強い。もともとラージのプラットフォームだからこそやれることがたくさんあって計画してたんですけど、MX-30(マツダ初のEV)を開発してきたときに、電池ってこうなんだっていうのが分かるわけですよ。あ、電池ってこうやって使わなくちゃいけないんだと。そこで学んだことを生かした、より優れたPHVにするためにプラットフォームを見直さないかんなと。
延期の決定はすごく議論しました。遅らせるとしたら相当影響が出るので
池田 それはスペース的なキャパが足りなかったんですか。
藤原 キャパが足りないだけじゃなくて、冷却も含め、ちゃんとプロテクトしないとだめだということです。それで、なおかつ時代の変化も、技術の進化もある。FR化でたくさんスペースを取れる結果、少し楽になるところも見えてくるし、電池の進化もありますから、そういうのも含めて、もう一回見直そうと。もうここで1回プラットフォームを大幅に見直すので、1年間ほど遅らせる。ここは英断でしたけど、やっておかないと、あとで大変になるので。
池田 まあ問題を先送りして見切りで進んでも全部返ってきますからねぇ。
藤原 だと思うんです。だから、ここはすごく議論しました。トップを含めてみんなで、やるかやらんか。遅らせるとしたら相当影響出るので。
池田 まあ確かに2025年くらいから10年間くらいの主役は、多分徐々にPHVになっていくでしょうからね。ただ、PHVの燃費の計算方法は、果たして今の計算式のままいくんですかね。
藤原 分かりません。
池田 分からないですよね、これね。
藤原 分からないですけど、今はルールはルールなんで、だから、あのルールに沿って考えるしかないですね。
池田 今の計算式は、要するに使い方における1つのストーリーに基づくものですよね? バッテリーだけで60キロ走れると、簡単にCO2排出量が40グラムとか50グラム以下となる計算式になっている。だから、組み合わせる内燃機関の燃費がどれだけ悪かろうが、EV走行で60キロさえクリアすれば、あとはどうとでもなってしまう。
ただし現実の運用も、ほぼ毎日充電すれば、化石燃料を使わずにEVとして運用できちゃうという可能性も高いので、何が嘘で何が実態なのかは、本当は蓋を開けて実数を統計的に見てみないと分からないわけですよね。
藤原 ですからBMWさんみたいに、街の中だけはもうEVでしか走れないようにするとかいうような議論もあります。コネクティビティがあれば簡単にできる話なので、そういう方向にひょっとしたら動くかもしれないです。郊外に行けば、もう少しエンジンとの組み合わせで走っていいよと。ただ、街の中はEVモードでしか入れないようにするとか、もっと厳しくしてもう完全にBEVしか走れないようにするとかいうのは、地域主導で選択することもあるのかなと思うんですけどね。だから、今はこういうルールですけど、多分普及に応じてルールが徐々に変わっていく可能性はあります。
池田 ただ怖いのは、あのルールを主導しているのはヨーロッパじゃないですか。過去の例を見ると、あの人たちは自分たちに都合が悪くなるとルールの方を変える。スキーのジャンプでもル・マンでもみんなそうでしたから。
藤原 (笑)
池田 まあまあ、このあたりは藤原さんは何も言うわけにはいかないでしょうけれどね。
藤原 (笑)
池田 そういう横車を、1年くらいで開発ができるものでやられるんだったら、まだしょうがないですけど、プラットフォームの世代ごと影響を受けるほどのものを、5年、10年のスパンで温めて、つまり事業計画を立てながらやってきたことを、あとで突然ルール変えられるのは非常に困りますよね。
藤原 まあ1つ言えるとしたら、米国はルールがちゃんとしてますね。
池田 米国は、その辺フェアですよね。
藤原 本当にフェアなんですよ。
池田 全員に分け隔てなく厳しいですからね。
藤原 そうです(笑)。
池田 こんなのできないだろうっていうぐらい厳しいですからね、全員にね。いや話を戻しましょう。
今の新しい世代は本当によくなっているはずなんですよ、オーディオなんか特に
藤原 ラージですね。変更したのは、そういう理由です。
池田 えーと決算資料の25年の商品構成、ラージプラットフォームの延期後の構成比率予測を見ると、現行世代の責任がめちゃめちゃ重くなっているじゃないですか。前回の計画では、旧世代はほぼなかったのが、20%ぐらいはどうもありそうだと。
藤原 その通りです。
池田 で、実は、この間MAZDA3を1週間ほどお借りして、その直後にMAZDA6にその場で乗り換えたんです。横浜のマツダR&Dセンターで。そしたら、非常に厳しい感じだったんですよ。
藤原 第6世代にも、良さはあるんですけどね。
池田 何時間か乗っていると、感覚が慣れて、いや、これはこれでいいクルマじゃんって思うんですよ。ただ、乗り換えた瞬間の衝撃はいかんともしがたいし、そのギャップは忘れられない。
藤原 というぐらい、今の新車体はすごく良いと。
池田 ホント良いってことなんですよ。改めてMAZDA6に乗って、第7世代すごいと思いましたね、正直。技術の進歩ってのは否応なくそういうことなんですが、ある意味残酷でもあります。
藤原 進歩についてはそうですね。
池田 それとMAZDA3のオーディオを聴いたあと、クルマを乗り換えてMAZDA6のオーディオを聴くじゃないですか。もう、「うわぁ!」っていう変な声が出るぐらい違うわけですよ。トランジスタラジオかと。
藤原 第6世代も悪くないんですけど、今の新しい世代は本当に良くなっているはずなんですよ、オーディオなんか特に。まあ、これは語りだしたら1時間ぐらい語ると思いますけど(笑)。
池田 あれができた最大の理由は、SKYACTIVシャシーでタイヤが前に行ってくれたからじゃないですか。バルクヘッド回りにスペースができて、エンクロージャー付きのスピーカーをボディ骨格にしっかりボルト留めできたから。
藤原 でも、タイヤが前に行ったのは前の世代からなんで。
池田 ああ、確かにそうですね。
藤原 でしょ? だから、前の世代からやりたかったんですけど、誰も私の言うことを聞いてくれなかったんです。
池田 ただ、あのオーディを最終的に仕上げた人って、すごいと思うんですよ。スピーカーの位置とマウントという基礎的な素養の高さはもちろんなんですけど、定位と広がりって相反するところがあるじゃないですか。その両方をちゃんと両立させているんですよね、うまい具合に。あれのさじ加減をやった人は、すごいですね。
藤原 あれはすごいですよ。そうはいいながら、それを引き出すためにベースを上げているからできるんです。
池田 それは、そのとおりですね。
藤原 本当は前世代からやりたかったんですけど、ドアのスピーカーでやると、それが出せないんですよ、ビビるんで。
池田 エンクロージャーを使うと良いのは確かですが、あの位置に入るエンクロージャーのキャパシティって知れているじゃないですか。小さいエンクロージャーでスピーカー動かしたら、空気がバネになって邪魔をするから、当然今度はアンプのパワーがいるわけですよね。そうじゃないと。
藤原 動かないです。
池田 それも全部やったわけですよね。だから、単価の高い部品は使っていないですけど、手間の掛かり具合というか、やっていることはプレミアムオーディオですよね。丸本社長は「何でお金取らないんだ」と怒ったそうですけど。
藤原 標準オーディオができあがったときに、BOSEはプレミアムオーディオはどうやってやるんだろうって、これを超えるもん持ってこれるんかって思ったくらいですから。
池田 いや、だから聞き比べると、ちょっとBOSEかわいそうです。もうBOSEに50万ぐらいあげないと。プレミアムっていっても8万いくらのオプションでしょ? 50万ですごいのやれっていったらできると思うんですよ。あそこから先はちょっとやそっとの予算では音は良くならないから。
藤原 開発期間も含めて、限界があったんです。
池田 藤原さん、オーディオに関して1つだけ、あのオーディオの売り方の面白いアイディアをこの間聞いてきたんですよ。MAZDA3を借りた時、オーディオの専門家に聞いてもらったんですよ。そしたら、これ素晴らしいけど、これを文章で一生懸命書いても、普通の人には伝わりませんよねと。だったら、中でガンガンに音量上げといて、ドア、バンと閉めたら、外に音漏れしないでしょう? って。
藤原 しないです。
池田 音漏れしないってかっこいいじゃないですか。「音漏れかっこ悪い」って言っちゃったほうがいいですよって彼は言うんですよ。
藤原 なるほど、確かに。
池田 それはショールームですぐ再現できて、誰にでもすぐに分かる。
藤原 ありがとうございます。使います。これ確実ですから。本当に音漏れしないんで。いや、本当に感じます。今のやつはもう音漏れバンバン(笑)。
池田 それはしょうがない。だってドアの鉄板の裏側にスピーカーがあるんですから。
7世代っていわれている技術を現行世代に入れてこうと思ってます。もうそれをするしかないんです
池田 さあ、そして、じゃあ、こういう状況で旧世代を引っ張って、どうやって売っていくんですか。
藤原 直そうと思ってます。
池田 おおー。
藤原 だから、今の新世代の、まあ7世代っていわれている技術を現行世代に入れていこうと思ってます。もうそれをするしかないんです。
池田 もう年次改良を頑張ると。
藤原 頑張ります。
池田 まあ、そうですよね。
藤原 それしか、われわれが生きていく道はないんです。
池田 ほかに方法ないですか。
藤原 ないです。ですから、それを放ってしまうと、また商品が安い価格を訴求する販売に後退しちゃうので。価格訴求販売させないためには、もう必死に年次改良するんです。そのためには、今回の技術を全部入れていくということをやっていくしかない。もうそれは号令をかけております。
12月3日掲載予定の4へ続く
(池田直渡)