交番勤務の男から詐欺被害、すべて奪われ「警官に悪い人いないと信じた」

特殊詐欺対策で知った情報を悪用し、京都市伏見区の男性(78)から1110万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元京都府警巡査長、高橋龍嗣被告(38)(懲戒免職)の初公判が9日、京都地裁であり、高橋被告は「間違いありません」と起訴事実を認めた。
起訴状などによると、高橋被告は、伏見署砂川交番に勤務していた昨年11月8日、「男性が大金を引き出そうとしている」との金融機関からの通報で出動。男性が資産を持ちながら生活保護を受給していたと知り、「お金を持っていたら生活保護は受けられません。お金は警察で預かって調べます」などとウソをつき、男性宅で2回にわたり、それぞれ460万円と650万円をだまし取ったとされる。
検察側は冒頭陳述で、高橋被告が、事件の3年前に外国為替取引を始め、損失の穴埋めのために男性をだましたと指摘。逮捕直前の6月上旬には、男性に被害届の取り下げを依頼し、10万円を郵送していたことを明らかにした。
高橋被告は被告人質問で、「警察官としてやってはいけないことをした。罪を一生背負っていく」と謝罪した。
被害男性「警察官 悪い人いないと…」

被害に遭った男性が読売新聞の取材に応じ、「警察官に財産をだまし取られるとは、夢にも思わなかった」と憤った。
男性は独身で、長年一人暮らしをしてきた。食費などを切り詰め、少しずつためていた年金と生活保護費のほぼ全てを奪われた。昨年11月に高橋被告と出会い、金を預かると持ちかけられた時、「警察官に悪い人はいないと信じ切ってしまった」と悔やむ。
その後も高橋被告はコンビニで買った食べ物を手に男性宅を訪れたり、電話をかけたりしては、「元気にやっているか」「しっかり保管しているから心配せんといて」と気遣う言葉をかけてきた。何より「友達になる」と言われたのがうれしかったという。連絡が途絶えがちになったことから、今春、府警に相談。6月に高橋被告は逮捕されたが、現在まで被害弁済はされていない。
「被害に遭ってから、涙をぬぐいながら生きてきた。奪われた財産を返してほしい」