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原子力や半導体、IT(情報技術)など安全保障上で重要な日本企業への出資規制を強化する外国為替法改正案が衆院を通過し、今臨時国会で成立する見通しになった。
「米トランプ政権が中国を念頭に外資規制を強化する新法を成立させたのを受け、日本でもと官僚が忖度して作った法律です」(外資系ファンド幹部)という。だが、その裏では、外資に買収されたくない日本の有力企業の幹部が強烈なロビー活動を展開したことは、あまり知られていない。
初夏、足しげく官邸詣でをする財界人があった。お目当ての人物は、いまや官邸の陰の主役とも言っていい今井尚哉・政務秘書官だ。狙いは外資の出資規制を強化する法律の改正を実現すること。今井秘書官を通じて、財務省に外為法の改正を働きかけることにあった。
「この財界人は、大手銀行から外資ファンドを介して日本を代表する企業トップに就いた人物です。この企業は粉飾決算や原発事業で巨額損失を出し、目下、再建のただ中にある。このトップにとって外資アクティビスト(物言う株主)に株付けされて、経営を振り回されかねないとの懸念があった」(ある中央官庁幹部)とされる。自社を守るためには是が非でも外資の出資規制を強化してほしかったわけだ。
これに手を貸したのが、旧知の間柄である経産省の元トップといわれている。この経産省幹部を通じて、同じく経産省出身の今井秘書官へと働きかけは広がっていった。
現状の外為法では、外国投資家が安全保障にかかわる事業を手掛ける国内の上場企業の株式を10%以上取得したり、非上場企業の株式を取得したりする場合、事前の届け出を義務付け、審査している。対象業種は武器や航空機、宇宙開発、電気、ガス、通信、放送、鉄道、携帯電話製造などに及ぶ。改正される外為法では、この規制をさらに強化して、届け出・審査の基準を対象業種の1%以上に強化するもの。念頭にあるのは「赤い資本」と呼ばれる中国の投資家だ。
当然、外資ファンドなどは規制強化に反対するが、「詳細は政省令で明確化し、欧米の投資家が不当な不利益を被ることはないよう配慮する」(関係者)という。
この財界人の狙いは、まんまと成功したようだ。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)