◆無駄無駄無駄なイージス・アショアの日本配備
これまでに17回(過去の17回分はHBOL本体サイトで閲覧の場合、本記事下欄外にまとめてあります)にわたり、日本におけるイージス・アショアの配備計画について、それは合衆国防衛専用軍事施設であって日本の防衛にとって全く有害無益であり、平時においてですら日本の防空体制だけでなく自衛隊そのものを破壊する愚挙であると厳しく批判してきました。
その中でとくに秋田イージスアショアは、先制奇襲核攻撃の最優先標的となる弾道弾防衛固定基地が人口密集地に隣接していることを指摘してきています。また合衆国海軍でも港内での使用を避けている大出力レーダーが人口密集地と産業施設に隣接していることを指摘してきました。
今回、秋田放射能測定室「べぐれでねが」 のめたぼ氏から陸上自衛隊新屋演習場付近からの空撮写真を提供していただきましたのでご紹介します。
撮影はドローンによるもので、最高高度は、自主規制いっぱいの500mです。高度規制については、航空局、所轄空港に申請、許可を受けているとのことです。(凄くたいへんだったそうです。)
今回は、空撮写真をご紹介し、簡単な解説をします。詳細な解説は次回以降となります。
本稿では、想定核出力50kt、爆発高度600~800m、爆心は新屋演習場としています。広島への核攻撃は核出力16lt、爆発高度600mでした。
イージス・アショアは、地下サイロ、地下施設ではなくすべて地上施設ですので、地表爆発ではなく、標的直上での上空爆発が選択されると思われます。これは地表核爆発では、火球と衝撃波の威力が最大限に発揮できないためです。
◆新屋演習場付近上空からの空撮
まずは、イージス・アショア配備予定地である陸上自衛隊新屋演習場付近からの空撮写真を東方(県庁・市役所側)、北方(秋田港側)、南方について3枚示します。撮影高度は、自主規制高度の500m以下で、めたぼ氏によるとこれらは500mで撮影したものとのことです。
北朝鮮(DPRK)のMRBMに搭載されるであろう核弾頭は、50kt級の強化原爆で、空中爆発高度は600~800m程度と予想されますので、空撮写真の見通し距離と爆発点からの見通しはだいたい同じとなります。
まず東方の県庁側です。地上には、天然の遮蔽物は全くなく、約8km先の山の麓まで完全に見通せます。これは、核攻撃の標的としては遮蔽する地形が多く不適であった長崎市でなく、絶好の標的であった広島市と同じになります。
秋田県庁と秋田市役所は爆心からの距離2500m程度の地点に隣接しており、想定焼失半径の3000mに含まれます。
写真手前は秋田運河で、その東側に倉庫などの商工業街区とロードサイド形の商業街区があり、その東に居住区、更に東に県庁市役所をはじめとしてCBD(Central of Business District中心業務地域)があり、すべて推定焼失半径に含まれます。核攻撃後、秋田県庁、秋田市役所、秋田県警察本部、秋田市消防本部、秋田市立病院は、機能を喪失したまま焼失することとなりますので、自治体の指揮系統を含め組織的都市防災は被爆後直ちに失われます。
写真中央には、運動公園が見られますが、火災旋風*の発生によって、避難民は全滅することになります。
〈*関東大震災では陸軍被服廠跡で火災旋風が発生し、避難民3万8千人が死亡した。/参照:都内で火災旋風の危険性が高い7つの場所|AERA 2013/03/20〉
写真右側に東部ガスの天然ガス(NG)ホルダー(球形のガスタンク)と液化プロパンガス(LPG)タンクがありますが、爆心からの距離が2500m程度ですので被害は受けるものの、大型デブリ(破片、瓦礫)の激突などが生じなければ辛うじて持ちこたえると思われます。一方で推定焼失半径内にありますので、秋田市南部の残存消防能力はガス施設への延焼防止に大きく吸引されることになります。旭川が爆心側の防火帯になりますが、NGガスホルダーやLPGタンクに延焼した場合は、小型核兵器並の爆発威力を持ちますので、残存消防能力をすべて投入してでも死守することとなります。
なお、衝撃波と爆風によって、ガラスやトタンなどは8km程度先まで破壊されますので、写真の全範囲内でガラスによる死傷者が発生します。
爆心から北側は、手前から研究・試験施設、球技場、公立の各種学校、工業地帯となります。約2000mの地点に木材工場があり、可燃物が密集していますので核攻撃後の生存の見通しはきわめて暗いです。
写真中央右に見える秋田運河東岸には油槽所があり、石油タンクが密集していますが、爆心からの距離は3000m程度ですので、延焼しなければ誘爆することはないと思われます。一方で、延焼を阻止するために残存消防能力は油槽所に吸引されることとなります。油槽所の防衛に成功した場合は、3500m圏外に広がる住宅地への延焼は免れますが、失敗すれば周辺と秋田港は火の海になります。
秋田運河河口対岸には、秋田港がありますが、機能は維持されると考えられます。但し、ガラスは破砕されるため、ポートタワーセリオン から飛散するガラスによって周囲への被害が予想されます。
写真中央を横断する川は、一級河川雄物川(おものがわ)です。手前に広がる住宅街は、爆心から2500m以内に存在し、三方を雄物川、旭川、秋田運河に囲まれるため、全域が焼失するだけ無く、脱出もきわめて困難となります。
残念ながら、生存にはきわめて暗い見通ししかありません。
雄物川南岸(写真上部)は、爆発時に屋外に居た人は二度の火傷(水ぶくれになる)を負いますが、自然発火圏外であり、ガラスや火傷により大けがをする人が多数生じますが、街そのものは失われないでしょう。この領域では、適切な医療が提供されれば死者は発生しにくくなります。
◆先制奇襲核攻撃は秋田市の3分の1を消滅させ得る
ここまで写真と地形図で秋田市を見てきましたが、秋田イージス・アショアに50kt級の核で先制奇襲核攻撃が行われた場合、秋田市のCBDは、直ちに機能を消失し、秋田県・市の機能は失われ、秋田市の1/3は消滅すると思われます。
一方で、鉄道は爆心から4~5km圏外を弧状に敷かれていますので電化施設以外は機能を失いません。また高速道路は機能が維持されます。故に、被爆後12時間予想されるフールアウト(黒い雨と呼ばれ、致命的な強い放射能を帯びる)を避けられた地域は、かなり短時間でインフラの回復は見込まれます。
秋田市の人口は、30万人ですので被爆後半年内の死者は4~5万人程度と予想されます。これは、爆心がCBDから2500m離れていること、爆心の西側が海であることから人的被害規模が半減するためです。
◆本来あり得ない被害予測
秋田市には、本来戦術的にも戦略的にも核攻撃を行う価値は皆無であって、このような被害予測をする理由は本来全くありません。あくまで、合衆国の兵器産業と合衆国防衛のため、また安倍自公政権の権力維持という個人的かつ刹那的理由のみからイージス・アショアを秋田市に配備するからこそ発生する危険です。
しかも日本本土防空には全く意味がありません。
欧州イージスアショアの場合は、本シリーズで述べたように合衆国のお金で配備され、合衆国が運用し、しかも人口のきわめて少ない場所に配備されています。
欧州イージス・アショアが配備されたデベセル基地は、周辺の人口密度はきわめて低いです。ここで秋田新屋演習場とデベセル基地のだいたい同縮尺の衛星写真をGoogleMap衛星写真で再掲します。
◆ルーマニア陸軍デベセル基地=ルーマニア配備イージス・アショア基地
◆陸上自衛隊新屋演習場
このような外国領土防衛専用軍事施設を一兆円前後に及ぶ日本人の税金で設置し、日本人によって運用する(先制奇襲核攻撃によって米兵は死なない)という安倍自公政権の行為はおよそあり得ない狂気の沙汰なのですが、これを絶賛支持するのが安倍自公政権支持者であり、カタログミリヲタという兵器スペックのみ愛好家の一群です。
つい先日、このカタログミリヲタの暴言の中でも、「秋田は人口が少ないから適している」などというものが目に付き、呆れ返りました。
このカタログミリヲタ人士の頭には、秋田市に30万人の市民が居住し、秋田県の中心業務地域(CDB)が核攻撃による推定焼失半径内に含まれるという事実が全く入っていません。「(米軍)兵器スペックのみ愛好家」ならではでしょう。
こういった歪な思考とそれに基づく市民への攻撃は、沖縄でも見られますが、自分の頭で思考することも自分の力で調べることも放棄した故のことであり、安倍自公政権与党政治家にも共通しています。
これらは、まさに本シリーズ第9回、第10回でその爆誕を指摘した“家畜人ヤプーしたっぱ“そのものです。
秋田県市にたいして非国民呼*ばわりしたアベウヨ、ネトサポと呼ばれる人々と共通する異常な一群と言えます。
〈*”「イージス引き受けないのは非国民との批判、県内外から」秋田の佐竹知事が明らかに 毎日新聞” 2019/06/24〉
空撮写真には、そのような“家畜人ヤプーしたっぱ“の空虚かつ無意味な譫言にはない、現実に先制奇襲核攻撃に晒されることとなる30万人市民の生活が写っています。
今回は、空撮写真をもとに想定される先制奇襲核攻撃による被害程度を概説しましたが、次回は2013年度外務省委託研究*に基づいてより詳細に解説します。
〈*平成25年度外務省委託「核兵器使用の多方面における影響に関する調査研究」 朝長万左男2013年度外務省委託研究/本稿もこの研究報告書をもとに被害程度を試算している〉
今回、秋田放射能測定室「べぐれでねが」の「めたぼ」さんから、空撮写真を提供していただきました。誌上でお礼申し上げます。
今後も空撮写真などを用いてより詳しく様々な事柄を記事化してゆきます。
秋田放射能測定室は、多くの方々の寄付で支えられています。3.11以前には、多くの研究所、試験所、大学で維持不能となっていたGe検出器式の装置を個人規模で運用するのは、たいへんに困難ですので、ご関心があればこちら をご覧になりご支援くださりますと幸甚です。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』ミサイル防衛とイージス・アショア18
<取材・文/牧田寛 写真提供/秋田放射能測定室「べぐれでねが」>
【牧田寛】
Twitter ID:@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中