渋谷でネズミ目撃相次ぐ ネットでも“炎上” 駅周辺再開発が原因か

東京都渋谷区で最近、ネズミの目撃情報が相次ぎ、区などが対応に追われている。
8月上旬にはコンビニエンスストアでネズミが店内を駆け回る動画がインターネット上で拡散し、店が営業休止となる騒動もあった。渋谷駅周辺では大規模な再開発が続いており、専門家は「再開発で解体されたビルなどからネズミが分散したのでは」と分析する。「渋谷のネズミ」問題を追った。(吉沢智美)
平成24年に渋谷ヒカリエが開業するなど、近年、大規模再開発が進むJR渋谷駅周辺。古いビルや建物は次々と取り壊されてきた。ネズミが目立つ原因を、駆除業者らでつくる「ねずみ駆除協議会」(川崎市)の矢部辰男会長は、「すみかとしていたビルが解体されたことで、居場所を追われたネズミが周囲に分散したのでは」と推測する。
渋谷駅周辺は大きな繁華街があり、飲食店から出る生ごみなどはネズミのエサになる。実際、ネズミ騒動があったコンビニも、駅周辺地域にある。コンビニの運営会社は謝罪して商品の撤去やネズミの駆除、店内消毒などの対応に追われ、いまだに店舗再開の目途がたっていない。騒動を受けて、区ではビルなど建物の解体の届け出をする業者に駆除団体を紹介するなどの対策も講じ始めた。
ただ、限界もある。築地市場があった中央区などでは解体工事の際にネズミ駆除などを行うよう指導要綱に明文化しているが、渋谷区では定められていない。区は「再開発地区の中でも、建物解体が終わった区域では、業者が自主的にネズミ駆除を行っている」とするが、駆除は義務ではなく、全ての区域で行われているかは分からない。
一方で近年、渋谷でネズミが急増しているのかは定かではない。統計調査はないが、区に寄せられたネズミの相談件数は30年度で179件。10年前の20年度は187件で、増加傾向にあるとはいいがたい。
やはり歌舞伎町など大規模な繁華街を抱える新宿区では、30年度の相談件数は347件と渋谷区の2倍近くに上る。
「渋谷のネズミ」が最近になって注目されるようになった一因としては、会員制交流サイト(SNS)などの影響が考えられる。コンビニのネズミ騒動後、ツイッターで区内の大手アパレル店舗でも服の上のネズミの動画が投稿され話題になった。動画は投稿サイト「ユーチューブ」などに転載されるなどし、“炎上”状態になったが、大手アパレルの担当者によると、その動画は昨年6月に撮影されたとみられ、それ以降はネズミに関する報告はないという。
再開発で街が新しく生まれ変わっていく一方で、ネズミ問題に悩む渋谷。区の担当者は「マイナスイメージはいいことだとは思わないが、根本的解決策が見つからない」と話している。

渋谷区で問題となっているネズミは、民家や街に出没する「クマネズミ」とみられる。都福祉保健局によると、都内で平成30年度のネズミをめぐる相談件数はクマネズミ1659件、ドブネズミ318件、ハツカネズミ9件で、種類が判明しているネズミではクマネズミが全体の約8割を占める。
体長15~20センチ。身軽で細い電線を伝ったり壁の裏を駆け上がったりすることができ、ビル内部の高い所にも生息するが、感染症を人へ媒介する危険があるほか、電線ケーブルを噛んで停電の原因となる恐れもある。