うつ病や不安障害などの精神疾患の患者は年々増加し、420万人に迫っている。精神疾患で育児が困難な親を前に自分を責め、悩みを打ち明けられずに苦しみ続けている子どもたちがいる。そんな境遇の子どもたちを支える取り組みが各地に広がり始めている。福岡市では14日、当事者である子どもが主体となった交流会が予定されている。
福岡市の病院職員の女性(31)は、小学3年の時に母親が精神疾患を抱えた。過食になり、ヒステリーを起こし、寝たきりで過ごす日々。父親はあまり家に居着かず、母親の病気に向き合おうとしなかった。姉と一緒に母親の面倒をみた。
料理が上手でポテトチップスも手作りしてくれる母親だった。寝込む母親を家に残し、子どもだけでスーパーに行き、料理や掃除などをこなした。「母親の世話は一生続くのか」。小学生の心が何度もつぶれそうになり、手首を切ろうとしたこともあった。
中学2年ごろには母親も働けるほど回復したが、親子でけんかしたり、甘えたりする関係にはなれなかった。高校に入った当初は保健室に登校した。社会人になっても他者を頼れず「なぜ自分だけで解決しようとするの?」と周囲に言われた。「身近な人と腹を割って話すことをしていない。それが社会で出るのかもしれない」と思った。
厚生労働省によると、2017年の国内の精神疾患の患者数は約419万3000人で08年(約323万3000人)の1・3倍。この間の子育て世代に重なる25~44歳の患者は全体の2~3割弱で推移しているが、実際に子育てしている人の数などの実態について同省は把握できていない。
子どもが中心となった交流の場は、18年1月に東京で発足したグループ「精神疾患の親をもつ子どもの会(愛称・こどもぴあ)」を皮切りに、大阪、札幌でも定期的に開かれている。東京ではこの2年間で計250人以上が参加した。
精神疾患を抱えた親がいる世帯の支援を研究する県立広島大の松宮透高(ゆきたか)准教授(ソーシャルワーク)は「集いで子どもが『人前で初めて(親のことを)言いました』と明かすケースは少なくない。似た境遇を乗り越えてきたロールモデルとの出会いもある当事者グループが活動する意義は大きい」と話す。
福岡でも昨春、精神障害者の家族と支援者でつくる任意団体「福岡こどもとパートナーの会」が、子どもの交流会を初企画。3カ月に1度ある交流会に今年から女性も参加した。「ぼろが出ないように」と外で気丈に振る舞い、親を慕いたい気持ちと受け入れられない気持ちとの間で葛藤した参加者と会い「自分だけではないと体感できた」。
12月の交流会では進行や運営をスタッフではなく、女性ら2人の当事者に任せる。同会の金子勇人代表は「当事者同士が語りやすくなるのではないか」と期待している。
交流会は14日午前10時半~正午、同市博多区内で参加は無料。原則18歳以上の子ども当事者が対象。詳細な場所は申し込み後に連絡。メール(fukuoka_childs_partner@yahoo.co.jp)【青木絵美】