図書館のない町を「まちじゅう図書館」に――。奈良県吉野町は、町内の店舗や個人がそれぞれ「図書館」として登録し、所蔵する書籍を共有できる「吉野まちじゅう図書館プロジェクト」を始めた。本の貸し借りを通じて新たな人的交流を生み出すのが狙い。既に個性ある13カ所の図書館が登録済みだ。【萱原健一】
一般の図書館と同じように書籍の貸し出し管理を行える「リブライズ」というサービスを利用したプロジェクト。図書館の開設は、フェイスブックへ登録すれば誰でもできる。開設時に必要なバーコードリーダーは町が貸し出す。
吉野町は中央公民館内に図書室(蔵書約9000冊)があるが、町立図書館はない。町はインターネットを介してモノや場所などを共有(シェア)する「シェアリングエコノミー」を活用しようと、11月に「まちじゅう図書館」を開始した。ハコモノの図書館建設ではなく、既にある町内の「財産」を活用しようという発想だ。
リブライズのホームページには全国の「ブックスポット」があり、そのうちの一つ。中央公民館図書室のほか、町内のカフェや寺、ゲストハウスなど13の図書館が登録されている。絵本が充実している「木の子文庫」やシダ植物専門の植物園「しだのすみか」など、それぞれ個性的な図書館となっている。
登録図書館の一つが、吉野山のゲストハウス「KAM INN(カムイン)」。約400冊ある蔵書のうち312冊を11月下旬に登録した。女将(おかみ)の片山文恵さん(32)は昨年6月に得度した山伏でもあり、宿には「山伏」「妖怪」「仏教」など民俗学や宗教関係の本が多い。宿泊客は関東地方や名古屋からの旅行者が多く、「うちの蔵書に目を留めて、吉野という土地の文化に興味を持って来てくれる人がいればうれしい。宿泊の必要のない近隣の人たちに来てもらうきっかけにもなれば」と話す。
プロジェクトを進める町総合政策課主査の八釣直己さん(36)は「本を貸し借りするために直接会うので、ネット上だけではなく、新しい交流が生まれる。活動の輪がさらに広がるよう取り組んでいきたい」と話す。
本は誰でも借りることができる。フェイスブックかLINE(ライン)でリブライズのサイトにログインし、スマートフォンの画面が貸し出しカード代わりになる。スマホなどを持たない場合は、バーコード付きの利用者カードを作ることもできる。問い合わせは同課(0746・39・9070)。