川崎のトンネル女性刺殺、男に懲役28年判決…「人命軽視の程度は高い」

川崎市宮前区で2006年に帰宅途中の女性が刺殺された通り魔事件で、事件の11年後に逮捕され、殺人罪に問われた鈴木

洋一
( ひろかず ) 被告(39)の裁判員裁判で横浜地裁は13日、懲役28年(求刑・無期懲役)の判決を言い渡した。
景山太郎裁判長は、「見ず知らずの女性を狙った通り魔殺人で、人命軽視の程度は高い」と指摘。その上で、別の罪で服役中だった鈴木被告が女性殺害を告白したことを踏まえ、「未解決の重大事件を告白した」と量刑理由を述べた。
判決によると、鈴木被告は06年9月23日午前0時頃、同区梶ヶ谷の貨物駅下のトンネル内歩道で、近くのアルバイト黒沼由理さん(当時27歳)の腹と右胸を刃物で刺し、殺害した。
検察側は公判で、鈴木被告は女性が死ぬ間際の表情を見てストレスを発散しようと計画し、初めから殺意があったと主張。弁護側は最初に腹を刺した段階で殺意はなく計画性もなかったと反論していた。
判決は「包丁に力を入れて刺し、死ぬ危険性は容易に認識できる」と当初からの殺意を認め、「無関係な女性を犠牲にしてストレスのはけ口とし、はなはだ身勝手」と指摘した。一方、別の通り魔事件で実刑が確定し服役していた鈴木被告は、神奈川県警にはがきを送り、黒沼さん殺害を告白したことで逮捕された。景山裁判長は「重い処罰が想定される未解決事件を告白したことは、広い意味で更生に向けた一歩を踏み出したと評価でき、無期懲役はやや重すぎる」と述べた。
黒沼さんの父俊昭さん(67)と母信子さん(74)は判決後、代理人弁護士を通じてコメントを発表。「判決は望むものではありませんでしたが、由理に報告できることは一歩前進だと受け止めています。裁判での被告人の発言は由理の命を軽視するもので、真の反省とはほど遠いものでした」とした。