「金髪」にしたら男性からの迷惑行為が激減した件

この1年間、毎月髪の毛をブリーチして金髪で過ごしていた。それまでは髪の毛の内側だけ自分のラッキカラーである緑を入れるインナーカラーを施していた。地毛にカラフルな色味は入らないので、一度インナーカラーを入れたい部分だけブリーチして白に近い金髪にし、そこからカラーリング剤を入れるのが一般的なやり方だ。ブリーチも、美容師さんから「一気に抜くと髪が痛むから」と、1回につき2度までのブリーチを推奨され、毎月少しずつ抜いていった。幸い、私は髪質が強いようで、ブリーチすることで切れ毛が発生することはあまりなかった。
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【写真】男性からの迷惑行為に遭いまくっていた黒髪時代の著者
しかし、これが通常2週間ほどですぐに落ちてしまうのだ。特にお湯や熱に弱く、銭湯とサウナが趣味である私はパキッとした緑色だったインナーカラーが熱の影響で10日も経つと淡いパステルグリーンに変化するのが常だった(派手髪バンドマンの中には髪色を保つため水で洗髪している人もいる)。
インナーカラー、半年くらいやったしそろそろ飽きてきたな、すぐ落ちちゃうし、せっかくだからもう全頭ブリーチして金髪にしてしまおう! そう思い立って金髪にした。しかし、当時通っていた美容室はいわゆる一般的な無難な髪型を希望する人の多い美容室で、ブリーチをする人はほとんどいなかったし、緑色のカラーリング剤も置いていなかったので、毎度「マニックパニック」という強力なカラーリング剤を特別に持ち込んで染めてもらっていた。
ある日私が全頭ブリーチを申し出た際もやはり、何度かに分けてのブリーチを勧められ「ブリーチの後に色を入れないお客さんに初めて出会った」とも言われた。この日のブリーチは2回。少し明るい茶髪になった程度だった。そこから毎月1~2回ブリーチを行い、半年ほど経った頃、ようやく全頭が金髪になった(派手髪の友人からはさんざん、ブリーチが得意な美容室に行ったほうがいいと勧められたが、8年ほど担当してもらっている美容師さんで、しかもカットがうまかったので浮気できなかった)。
金髪にするとインパクトが強いようで、仕事ではすぐ人に顔を覚えてもらえたり、人通りの多い場所での待ち合わせでもすぐに見つけてもらえるようになった。
また、金髪により生まれた思わぬ効果は迷惑行為が激減したことだ。悪質なナンパはなくなったし、駅などでわざとぶつかってくる男性や、満員電車内でわざと蹴られる被害にあわなくなった。
痴漢もそうであるが、ストレス解消のため迷惑行為を行う者は自分より弱そうな人をターゲットにする。金髪だと強そうなイメージを持たれ、ターゲットにされにくいことを実感した。私は快適な金髪ライフを送っていた。
今年の5月、以前お世話になったことのあるカルチャー誌『Quick Japan』の編集長より創刊25周年のイベントにお誘いいただく機会があった。Zepp Tokyoにて、アイドルや大御所バンド、芸人などが出演し大変楽しめたイベントだった。そこで、初めてアイドルグループ・BiSHのライブを観た。今までアイドルにはあまり興味がなかったが、彼女たちのエネルギッシュなステージに圧倒された。そして、センターを務めている子の髪色が銀髪、オシャレに言うと明るいアッシュでとても可愛く、マネしたくなった。のちにどのメンバーなのか名前を調べようとしたのだが、関係者席が2階で遠かったせいで顔がよく見えなかった。また、センターを務める子が頻繁に変わるグループであり、ネットで画像検索するも銀髪の子がなかなか特定できない。だから、ここではBiSHの子、と呼ぶことにする。
BiSHの子の髪色に憧れたが、突然髪色をガラリと変えるのはなかなか勇気がいる。そして、BiSHの子の髪色に魅了されてから半年が経過した11月、ついに私は彼女の髪色にすることを決意した。理由は、ずっと指名していた美容師さんがほとんどシフトに入らなくなり(副業中だと言われた)一度だけ他の美容師さんに担当してもらったが、いつもどおりの仕上がりにならなかったからだ。それだったらいっちょう、美容室ごと変えてみよう。そして私は、派手髪を得意とすることで有名な某美容室を予約した。
今まで8年近く通っていたおとなしめの雰囲気の美容室とは違い、店内はブリキのオモチャや季節柄クリスマスの飾りなど、遊び心溢れたインテリアで彩られ、BGMには少しうるさく感じるくらいのロックミュージックが流れていた。この美容室にはマニックパニックが常備されているので、緑のインナーカラーを入れていた頃のように持ち込む必要はない(派手髪のお客さんが続くと一時的に切らしてしまうことはあるらしいが)。平日の朝一だったのでお客さんは私の他2人しかおらず、私の1つ隣の席では女性がカラフルなエクステンションを付けてもらっている最中だった。
カウンセリングシートにどんな仕上がりを希望するか書き込み、美容師さんには今まで少しずつブリーチを繰り返して金髪にした経緯などを話した。私は明るい銀髪、つまりアッシュにしたいと伝えた。すると美容師さんは私の髪を観察して毛先に触れながら「これでも少し暗めの金髪なので、明るいアッシュにはなりにくいかもしれません。1つの手段として、ラベンダー色を入れるとそれが抜けるに従って、自然と明るいアッシュに見えるようになります」と言った。
まずは1カ月ほど放置されて伸びてプリン頭になっている根本をブリーチ。しばし放置した後、一度シャンプー台で流し、次におそらくラベンダー色を混ぜたであろうアッシュの薬剤を塗りたくられた。それから再度時間を置いた後、シャンプーとトリートメントをしてもらい、席に戻ると鏡には黒に近いグレーの髪色の私が写っていた。思っていたより暗いな……もしかして失敗だったかな……と思っていると、美容師さん2人がかりであれよあれよと半乾きくらいまでドライヤーで乾かしてくれた。
髪が乾くと少しまた色が変わった。美容師さん曰く、熱で色が変化していくとのことだった。そして伸びた分をカット。最後ドライヤーで完全に全体を乾かすと、ラベンダー色にもアッシュにも見える髪色になっていた。
ちょっとラベンダー色が強い気がするけどこれはこれでいいか。そう思って明るい場所に移動するとまた色が変わって見え、より自然なアッシュに見えた。
イメチェン、大成功! 上機嫌で帰路へ。最寄り駅から家に向かって歩いていると、突然「髪色すごいね~。どこ行くの~?」と、知らない男性から声をかけられた。美容室終わってすぐナンパ!? 久しぶりの路上ナンパにたじろいだが「結構です」とあしらった。
金髪のときはナンパ自体ほとんどされなかったのに……。整形手術をしたわけではないので、顔の作り自体は変わっていない。いや、表情自体は機嫌の良さにより少し明るくなっていたかもしれない。髪色1つでナンパされるとは、やはり「人は見た目が9割」である。そう言えば、緑のインナーカラーのときも「そのインナーカラーいいね~」と見知らぬ男性に声をかけられたことがあった。
考えてみると、このくらいの色のアッシュは原宿あたりのオシャレに敏感な若者が取り入れている。金髪は入念に手入れをしていないとすぐにボサボサに痛むし、ヤンキー上がりに見えないこともない。周りに与える圧もアッシュとは違う。
なぜ自分の好きな格好をするとこう、外野に突っ込まれるのだろうか。かつて私は自分の痩せ型体型に合うことと、母が気に入っているブランドということで清楚系の格好をしていた。それをある男性に批判され、人格否定までされ、しまいには摂食障害を引き起こすまで病んでしまった。今私はやりたい髪色にしている。他人から言われてやった格好でも生きづらく、好んでやった格好でも面倒が増える。一体どうすればいいのだ。私はただ、自分好みの格好をしたいだけなのに。
髪色の方は、2日ほど経つとラベンダー色が抜け、良い感じのアッシュ、もとい銀髪となった。今後は金髪時代とは違い、また迷惑行為が増えるかもしれない。でも、服が個性的だったら少しはマシになるかもと、ちょっとだけ強めなデザインの服を今は着ることが多い。服装で悩んで「これって変?」と自分なりにコーディネートした写真を友人にLINEすると「好きな格好しなよ」と返信が来て、今度買い物に付き合ってくれることになった。
実はこの友人、私が清楚系の格好を某男性に否定されたときも、カジュアル系で私に似合いそうな服を一緒に選んでイメチェンしてくれた恩人だ。そんな彼女から「好きな格好しなよ」と言われると、なんだか肩の力が抜けた。
好きな格好をしつつも、変な外野に絡まれないよう威嚇しながら生きないといけない。ただ、好きな格好をしても堂々としていれば、もしかすると絡まれにくいのかもしれない。この「堂々とする」ことが私にとっては結構難しい。自分の容姿に自信を持っている、または逆に無頓着であれば堂々とできるのであろう。
ルッキズム問題が話題となっている昨今、ルッキズムを叫ぶ人の中には正直「ちょっと痛いな」と感じる人もいる。それはきっと、自分の容姿を受け入れられていないまま「ルッキズム! ルッキズム!」と叫び自分の容姿への自信の無さから逃げようとしている人なのではないかと思える。
自分の容姿の気に入っている点も納得いかない点も受け入れた上で、「容姿で判断されたくない」と叫べれば、本人も周りも痛みを感じないのではないだろうか。その面ではまだ私は本来の意味でのルッキズムを叫べる勇気がない。
先日、Twitterでエゴサ中「初めて姫野桂の動画を見たけど美人じゃなかった。白石麻衣ちゃんの写真を見た後だったからかな」という内容のツイートを見つけた。なぜだか頭に来てしまい、そりゃ私はライターであり、容姿をウリにするようなタレントではないから当たり前だと引用リツイートで反論した。アイドルの中でも綺麗系の白石麻衣さんと比べること自体もナンセンスだ。このツイートに関し、動画ではなく生の私をイベントなどで見たことのある人たちからは、ありがたいことに擁護のツイートが相次いだ。
私は自分の顔面レベルが特別低いとは思っていないが、芸能界デビューができるほど可愛いとも思っていない。が、一般人レベルだと整っている部類らしいとここ数年でわかった。それは、美人だと言ってくれる人が増えたり、本を出版した際の広告で書影よりも私の写真の方を大きく使われたこと(これはちょっと複雑な思いだった)、またこの連載でもメイクさん付きの撮影が行われたことで、ますますそう思うようになった。
ルッキズム問題を提唱している女性の中には、元から顔の作りの良いモデルやタレントもいるため、少し説得力に欠ける部分がある。そりゃ、芸能界デビューの経験のある人は一般人より容姿が良くて当然だ。
Twitterで美人でないとジャッジされたのと、ストレスで肌荒れがひどくなったことから悪あがきとわかってはいるが、毎日朝晩2回、フェイスパックを怠らないようになった。これは綺麗になるための努力であり、気分も上がるため、私自身の美に関する意識を上げる良い機会になったと感じている。
たまに、「絶対モデルさんだろうな」と思うような高身長で服のセンスも良い美女が街を歩いているのを見かける。職業柄だろうが、堂々とした独特なオーラを振りまいていて、それが近寄りがたさも醸し出している。あそこまでいければ迷惑行為を行う方もひるんでしまうだろう。
今、私は銀髪を気に入っている。けれど、外野の雑音が入り込んできて私の容姿や格好をジャッジして邪魔をする。銀髪が気に入っているからこそ、もっと自分の個を大切にしたい。最終的には「ルッキズム」という言葉が流行らなくなるまで外見によるジャッジやそれに伴う迷惑行為がなくなってほしい。ブスだと思ってもいいけど口に出したりネタにして傷つけたりしないでほしい。
しかし、私も仏のような心の持ち主とは言えないので、あまり顔が整っていない人を見たとき「この人は美人ではないな」と思うことはある。人の好みはそれぞれなので、美人でないと思うことは自由。しかし、名指しで口に出して人を生きづらくさせる外野はくたばれ!
バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/
姫野桂(ひめの けい)宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei
2019年12月13日 掲載