留守中の自宅に他人が頻繁に出入りしていたと知れば、身の毛もよだつ恐怖を覚えるに違いない。
好意を寄せる同僚女性の自宅に繰り返し侵入し、盗みを働いていた元介護職員の男(46)が5月、住居侵入や窃盗などの疑いで奈良県警に逮捕された。女性に一方的に恋心を寄せていた男は、「(自分と)交際している確証がほしかった」と次第に行為をエスカレート。盗みだけでなく、女性の化粧水に自身の尿を混入させてもいた。ゆがんだ愛情が引き起こした異様な犯行の顛末(てんまつ)は-。(石橋明日佳)
奈良地裁での公判や捜査関係者の話などから事件を再現した。
女性宅があるのは奈良県内の閑静な住宅街。今年4月、近隣住民から「見慣れない人がいる」との通報を受け、警察官が現場に駆けつけたところ、辺りをうろつく挙動不審の男を発見。職務質問に曖昧な答えを繰り返したため、さらに問い詰めると「盗み目的で歩いていた」と認めた。
後日、任意の事情聴取に応じた男は、先の住宅街の40代女性宅に侵入し、女性の持ち物を盗んでいたことを明かした。自宅を家宅捜索したところ、女性物のTシャツ2枚が見つかり、県警は5月に住居侵入と窃盗の疑いで逮捕した。
男は当初、「自分で着るためにTシャツを盗んだ」と供述。単なる空き巣かと思われたが、動機はもっと別のところにあった。女性は職場の同僚だったのだ。
男は昨年1月頃から女性に好意を持つようになり、本人に告白もしたが、相手にされなかった。それでも諦め切れず、「他の男性と交際しているのではないか」と疑心暗鬼を募らせていき、今年1月、「(自分と)交際している確証がほしい」と留守中の女性宅に初めて侵入した。
無施錠だった浴室の窓から侵入し、まずはスペアキーを盗み、「盗みに入りやすくするため」とその日のうちに合鍵を作った。家宅捜索で見つかった手帳には「風呂窓からin」「合カギ作成」などと記していたという。
合鍵を手に入れた男は、逮捕されるまでの約4カ月間に女性宅へ数十回侵入し、服やゴルフバッグ、ゴルフクラブなどを盗んだ。それだけでは飽きたらず、化粧水2本に数回にわたって自身の尿を混入。手帳にも「化粧水に尿を入れた」とメモを残しており、後に「私由来のものを身につけてもらうことで、被害者を私のものだと思い込もうとした」と供述したという。
男は住居侵入、窃盗に加えて器物損壊の罪でも起訴され、奈良地裁で10月に開かれた判決公判で、懲役2年、執行猶予5年(求刑懲役4年)が言い渡された。裁判官は「被害者が負った精神的苦痛は非常に大きく、結果は軽視できない」と指弾。男は「今後、被害者とは一切接触しない」と誓約した。