新しいサービスが展開される高輪ゲートウェイは、どんな駅になるのか

2020年春、多くの人の注目を集める新駅「高輪ゲートウェイ」が開業する。ダイヤ改正は3月14日と報じられており、その日に開業するものと見られる。

そんな新駅には、さまざまな試みが投入されている。高輪ゲートウェイは、どんな駅になるのか、何を試みた駅になるのか。JR東日本の鉄道ビジネス上の位置付けはどんなものなのか。駅の概念を超越したものになることも考えられる。

山手線と京浜東北線だけの駅、だけど
高輪ゲートウェイは、山手線と京浜東北線だけが停車する駅である。上野東京ラインなどは停車しない。地下鉄とも接続しない。鉄道網の観点からは、それほど重要な駅ではない。東海道新幹線は東京と品川、東北・上信越方面の新幹線は東京、新しく開業するリニア中央新幹線の駅は品川になる。それらから乗り換えて、という場所なのだ。

しかし高輪ゲートウェイが注目されるのは、聞き慣れない名前だけではなく、駅の未来像を示すことになるからである。そのために、あえて「ゲートウェイ」という言葉を入れたのだろう。

では、高輪ゲートウェイは何の「ゲートウェイ」なのか。

どんな駅なのか
まず、高輪ゲートウェイはどんな駅なのか説明しよう。JR東日本の説明によると、「グローバルゲートウェイ品川」をコンセプトに、24年ごろに新たに生まれる街の核として、東京と世界をつなぐ玄関口となることを目指すという。

では、どんなことが行われるのか。駅構内ではロボットや駅サービス機器を試行導入するという。駅案内のAIサイネージは、音声認識や自然言語処理などのAI技術を組み合わせ、駅構内の案内や周辺の道案内などを日・英・中・韓の4カ国語で行えるという。また、JR東日本による各種情報サービスと連携し、列車の運行に関する情報をリアルタイムで行う。

「BotFriends Vision」や「AIさくらさん」、コミュニケーションロボット「EMIEW3」といった対話可能なシステムでは、話しかけるとロボットが返事をし、案内をしてくれる。

かつては駅員に尋ねたり、駅構内の表示を見たりしなければ分からなかったことが、テクノロジーの力で対応できるようになり、それも人間が対応するのと同じようになっている。また、移動しながら案内するロボットや、車いすタイプのロボットも導入される。

駅の警備もロボット化する。導入される警備ロボットでは、あらかじめ設定した移動経路を巡回させ、おかしな状況が発生したらそれを検知し、警備員に通知する。場合によっては、サイレンやフラッシュライトで威嚇することも可能だ。

清掃ももちろんロボットである。これに関しては他社でも実験を導入しており、開発競争の中にあるといってよいだろう。「EGrobo(イージーロボ)」は、夜間帯に駅構内の自動清掃を実施するロボットで、床面の汚れを洗浄する。おもに夜間帯に運用する。「CLINABO(クリナボ)」は、駅混雑情報とあらかじめ設定した移動経路に従い、駅構内の自動清掃を行う。

とにかく、テクノロジーにあふれた駅なのだ。これまで人がやらなければならなかった仕事が自動化されることにより、人を増やさなくても運営できる駅になる。人手不足の現在、こういった形の駅が必要であることも理解できる。

またそのぶん、人でなければできない仕事にも注力できる。機械がやってくれるおかげで、人こそができるサービスにも力を入れられる。そういった駅が、高輪ゲートウェイである。

エコに配慮した駅
高輪ゲートウェイは、テクノロジーだけではなく、エコロジーの面においても、先進的な駅となっている。デザインは隈研吾氏によるものであり、「和」を感じさせるデザインとなっている。折り紙をモチーフにした、障子を思い起こさせる大屋根、吹き抜けやガラス面で、駅と街が一体と感じられるようになっている。

この駅は、環境保全技術を駅に導入する「エコステ」として、さまざまな取り組みを行っている。例えば、屋根は膜屋根を使用し、内部の温度上昇を抑制するだけではなく、光が通過することを活用して、日中の照明電力量を削減する。

また太陽光パネルや小型風力発電機を設置し、再生可能エネルギーの導入を行っている。

駅構内では東北の木材を使用し、港区が推進する「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」を取得する予定だ。

大きな施設はそれだけエネルギーを使用するので、そのエネルギーを削減する、自ら作り出すことは、これからの駅に必要なものだ。またエコロジーとデザイン性を高度に両立させた隈研吾氏の技術力には驚かされる。

話題の改札機と無人店舗など
高輪ゲートウェイには、新しいタイプの改札機も導入される。タッチしやすさを重視し、形状をななめにしたもので、QRコードの読み取り部分も設置している。JR東日本ではSuicaを決済の主軸に据えているものの、QRコードを使用したサービスも考えていることがうかがえる。

駅改札内には無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」を設置。商品を手に取るだけでウォークスルーの買い物ができ、人手不足への対応も可能になる。また駅内のスターバックスコーヒーでは、アプリからの自動注文を受けつける。同店舗には駅ナカシェアオフィス「STATION BOOTH」が設置される。

なるほど、確かに新しい時代の「ゲートウェイ」だ。

キャッシュレス社会が進む中、それに対応した駅を、ということでいろいろと新しい試みに挑戦していることが興味深い。特に、QRコード改札は、Suicaに載せられないような、チケットレス可能な企画に対応することも想定できる。それとも、QRコード決済でチケットレス乗車を可能にするということか。どんな使われ方をするのか、気になる。

新しいタイプの駅をつくるというJR東日本の考えが、試行サービスにあふれた駅にすることにつながった。その意味もあって、未来像を提示するために駅名公募では票数の少なかった「高輪ゲートウェイ」にしたのだろう。

「高輪ゲートウェイ」はJR東日本にとっての「ゲートウェイ」
JR東日本は、グループ経営ビジョン「変革2027」で今後の展開を提示した。その中で今後の事業のあり方なども示されており、その実験的な存在として新駅高輪ゲートウェイを位置付けていることとなる。

JR東日本は、すでに鉄道事業だけではなく都市開発事業にも力を入れていて、東京総合車両センター田町センターの広大な土地を利用し、品川開発プロジェクトを行うことになった。

田町に広大な車両センターが不要になった理由として、上野東京ラインの開業により都心部に車両基地を設けなくても済むようになったことや、かつてのように寝台特急用客車などを多く留置しておく必要がなくなったことも挙げられる。

品川開発プロジェクトでは、駅周辺にオフィスや住宅、宿泊施設などを設け、24年度に営業を開始する。

新しい時代の駅をつくるということから、新しい時代の街をつくるという考えへとJR東日本の意識が動いている。鉄道ビジネスそのものを変えることが背景にある。そのための新技術を全面的に導入したのが、高輪ゲートウェイである。ゆくゆくは多くの駅がこの駅をモデルにし、スタイルやシステムを改めていくのだろう。

実験的な試みを行うことが新駅高輪ゲートウェイの最大の目的であり、JR東日本の今後にとっての「ゲートウェイ」ということだろう。

(小林拓矢)