旧産炭地の北海道三笠市で新規就農したがん免疫の医学博士、濱田洋文さん(61)のブドウが、市内のワイナリーで醸造され、今秋ワインとしてデビューした。売り切れのため12月から増産する人気ぶり。近い将来、自身のワイナリー設立を目指す濱田さんは「期待以上の良いものができました。ありがたい」と手応えを感じている。
昨年秋に三笠市達布の畑(4・7ヘクタール)で収穫した「バッカス」など白ワイン用のブドウ2種をワインにした。806本生産したが2カ月で欠品となり、市内の酒販店経営、奥博行さん(54)は「こんな短期間で商品がさばけたのは、すごい」と喜ぶ。閉山以来、人口減が進む中、新規就農者を後押しする同市、市議会、経済関係者らの協力もあったという。
サイエンスを生かした農業を
岡山県津山市出身の濱田さんは、東大医学部卒で、抗がん剤の新薬製造が専門。札幌医大教授などを務めたが「サイエンスを生かした農業を」と2013年春に退官し、第二の人生にブドウ栽培の道を選んだ。「(慣れた)医学界で培った人脈が全く役立たない場で、新しいことにチャレンジしたかった」という。今の世相を「少子高齢化で、人々が『守り』に入っている。社会が沈滞化している」とみていることもチャレンジの背景にある。
「美しい丘でワイナリーをやりたい」。三笠市に移住したのは15年春。妻の恭子さん(57)ら家族の手を借り、定植したブドウは3年かけて高さ2メートルに成長した。農作業の苦労はたくさんあったが「へこたれないブドウの丈夫さに助けられました」という。
目指すのは論理的、科学的な農業。「土づくりや地元の気候に合ったブドウの品種改良につなげたい」と意気込む。21年末までのワイナリー建設を視野に、農地の規模拡大を目指す。
三笠市は「空知ワイン」のパイオニアとされる山﨑ワイナリーをはじめ、醸造用ブドウの生産者は8戸。濱田さんのぶどうを使ったワインを含め、市内で生産されるワイン一般の問い合わせは市農林課(01267・2・3996)まで。【渡部宏人】