繊維産業で知られる大阪府泉佐野市生まれの「裏表のない肌着」が、障害のある子どもの親たちの間で反響を呼んでいる。きっかけは、同市がふるさと納税の新制度から除外され、逆風を受ける地元企業としてメディアで取り上げられたこと。新商品を開発した会社社長は「必要としてくれる多くの人に届けたい」と力を込める。【鶴見泰寿】
考案したのは、泉佐野市で食品会社「NSW」を営む西出喜代彦さん(40)。「洗濯の時、裏返った肌着を元に戻す手間とストレスを減らしたい」と思いついた。昨年、市の起業家支援事業に、地元の繊維関連企業など12社と共同で応募。インターネット上で資金を募るクラウドファンディングと市の補助金の計約3000万円を元手に今年6月、製品化に成功した。肌着は100%綿製で、生地を重ね合わせない特殊な縫い方によって表裏関係なく脱ぎ着することができる。
ブランド名は、裏表のない「誠実さ」を意味する英語から「HONESTIES(オネスティーズ)」と命名。タオルをはじめとする繊維産業が盛んな大阪南部・泉州地域の新たな地場産品として、市のふるさと納税の返礼品にすることを目指していた。
だが、製品化目前の5月、国は6月スタートのふるさと納税の新制度から市の除外を決定。市がインターネット通販大手アマゾンのギフト券を贈るキャンペーンを展開するなどしていたことから、「返礼品を寄付額の3割以下の地場産品とする」という基準を守っていないと判断された。西出さんらは当てにしていた販路を断たれることとなり、制度除外のあおりを受けた地元企業としてテレビのニュースで取り上げられた。
すると、発達障害がある小学1年の男児を育てる東京の女性から、1通の手紙が届いた。そこには、自身の息子が体育の授業で着替えた後、肌着を裏表逆に着て帰ってきたというエピソードとともに、新商品について「シンプルな動作で、きちんと衣類が着られることは本当に素晴らしい」とつづられていた。
視覚障害者にも好評だ。大阪南視覚支援学校中学部1年の酒井響希(ひびき)さん(13)=東大阪市=は「今まで(肌着の)タグや縫い目の感触で裏か表かを確かめていた。気軽に素早く着られて便利」と愛用する。
母康子さん(42)がニュースを見て、西出さんに連絡。商品化されていたのは成人男性用だけだったが、子ども用を試供品として送ってもらった。肌着を着て好きなドラムの練習に励む息子の姿に、康子さんは「余計なことを考えずに着られて、前より打ち込めているみたい」と語る。
16日には、子どもや赤ちゃん、女性向けも発売。今後は介護を必要とする高齢者や認知症患者向けの肌着の開発も検討するという。西出さんは「社会に貢献できる商品に育てたい」と意気込む。
男性用肌着は白と黒の2色あり、S▽M▽L▽XL――の4サイズでいずれも1枚2475円(税込み)。購入や問い合わせは商品ホームページ(https://honesties.jp)からか、NSW(電話0120・976・534)へ。