米国牛肉はEUでは禁止…それでもなぜ日本は輸入を拡大するのか

【トランプに握られた日本人の胃袋】#1

米国から安い牛肉が大量に入ってくる。高い和牛肉を買えない一般消費者にとってはありがたい話に見えるが、実はちょっと違うのだ。怖いことになるよという話を連載でリポートしていきたいと思う。

しばらく前に大きなニュースになったが、日米貿易協定が実質的な交渉入りから半年足らずで妥結した。国会でも簡単に承認され、来年1月1日には発効するという異例のスピードだ。茂木敏充外相のホッとしながらも得意げな表情を覚えている人も多いだろう。

この交渉で際立ったのは、トランプ大統領の米国産農産物への異常な執着だった。

「現在の2・5%の自動車関税を25%まで引き上げるぞ」と日本を脅し上げ、日本に牛肉、豚肉、大豆、オレンジなどの農産物の輸入拡大を迫った。日本に手っ取り早く農産物を買わせるには、日本の輸入関税を下げさせるのが近道で、結果、米国産牛肉にかけられる関税は38・5%から段階的に9%まで引き下げられ、豚肉は低価格の従量税を現行の1キロ482円から段階的に同50円へ。高価格品は現在の4・3%から最終的に撤廃されることになった。

関税が下がれば、その分、日本の市場で米国牛肉や豚肉を安く売っても元がとれる。日本の主婦は飛びつく。つまり、トランプからすれば、農産物の輸出拡大に成功したというわけである。

この交渉妥結について日本のマスコミも野党も「農産物が安く入ってくるなら、まあ、いいか」ということで、ほとんど突っ込みはなかった。安倍政権が交渉の条件にした「自動車関税の撤廃」に関して、「将来の撤廃というだけで担保がない」と騒いだくらいだ。

しかし、いま問題にすべきは、来月からドッと大量に安価で入ってくる米国の農産物の中身、「食の安全」である。特にヤバいのが牛肉だ。

こう言うと、トランプは「フェイクだ」と顔を真っ赤にさせるだろうが、米国の安い牛肉といえば、どうしても「肥育ホルモン剤」の問題を避けて通れない。しかも、このホルモン剤の問題があって欧州各国は、米国産牛肉の輸入を禁止しているのだ。そんないわくつき牛肉を大量に輸入し、ばくばく食って日本人は大丈夫なのか。そこを詳しく追いかけてみたい。

(奥野修司/ノンフィクション作家)