大塚家具・久美子氏、なぜ社長続投? ウラで囁かれる「大塚家の都合」 どこか奇妙な「資金の流れ」

今月12日、大塚家具がヤマダ電機の傘下に入ることを発表した。終わりの見えない業績不振からの脱却と再建を模索する形だが、その不振の原因とも言われる大塚久美子社長は続投するという。
世間を驚かせた決断の背景には、どのような思惑が隠されているのか──。

「引き続き全力を尽くしていきたいと考えております」
記者会見で自身の進退について質問が及ぶと、久美子社長はこう答えた。
2015年に父・勝久氏との経営権争いに勝利して以来、経営者としては負け続きだった久美子社長が、自ら社長続投を宣言してみせたのだ。
これまでも大塚家具の身売り話は再三噂されてきた。買い手として候補に上がっていたのは、貸会議室大手のTKPとヨドバシカメラだ。しかし、いずれも話がまとまらず、買収は実現しなかった。
「特に、2018年に水面下で進行していたヨドバシカメラとの提携が流れた背景には、久美子社長の強い意思がありました。ヨドバシカメラによる買収案は、久美子社長の退任が条件だったが、彼女は首を縦には振らなかった。経営状態がどんどん悪化する中、なぜそこまで続投にこだわるのか、だれもが不可解に感じていました」(関係者)
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頑なに経営権に固執する久美子社長。彼女のこの姿勢には、単なる創業家としての「プライド」以上の思惑が見え隠れしていないだろうか。
その核心に触れるためには、まずは2015年から2017年にかけての、大塚家具をめぐる一連の動きとその背景を振り返る必要がある。
2015年3月、創業者であり当時会長だった父・勝久氏と娘・久美子社長は、経営方針を巡る対立からお互いの退任を提案、プロキシーファイト(委任状争奪戦)にまで発展した。最後に勝利を収めたのは久美子社長だった。
しかし、退任が決定した勝久氏も、すごすごと引き下がるような男ではなかった。久美子氏が実質的支配権を持つとされる大塚家の資産管理会社「ききょう企画」に対し、社債の償還を求める訴訟を起こしたのだ。

2008年4月、ききょう企画は勝久氏が保有していた大塚家具の株130万株を買い取り、代わりに同氏に対して、5年を期限とした15億円分の社債を発行していた。久美子社長は「口頭での償還延長の合意ができていた」と主張したが認められず、2016年4月、ききょう企画が勝久氏に対して利息を含む17億円を支払うことで決着した。
その17億円を用意するため、ききょう企画は保有していた大塚家具株の約189万株を担保にして、三井住友銀行に相当額の借り入れを行ったとされる。2016年5月にはそのうち60万株の担保権を解除したうえ約7億円で売却、同行に対する借金は10億円程度となっていたという。
その後、三井住友銀行に残った128万株のうち43万株の担保権を解除し、新たに三菱UFJでも借り入れを行なっている。現段階で、三井住友銀行は担保の86万株全てを売却したとされるが、借金はまだ数億円ほど残っているという見方が強い。
ききょう企画は、あくまで大塚家の資産管理会社であって事業会社ではない。すなわち抱えた借金の返済は、同社の全資産を構成する大塚家具株の配当だけが頼りだ。
実は、ききょう企画が借金の返済を始めた時期に、大塚家具の「株主配当の大幅な引き上げ」が市場で話題となった。2014年度まで40円だった配当が、2015年度には倍の80円という大盤振る舞いになったのだ。
株主配当自体は、ききょう企画が借金を抱える2016年以前から行われていた。ただし、2014年度には4億7000万円、2015年度には3億6000万円の純利益を確保したうえである。

しかし、2015年度の好決算が、大規模セールによる需要の先食いだったと分かるのに時間はかからなかった。大塚家具はその後、2016年度は45億円、2017年度は73億円、そして2018年度は32億円の赤字を計上することになる。
会社が危機的な状況に陥ったにもかかわらず、2016年度は前年同様80円の高配当、さらに傷口が広がった2017年度にも40円の配当が続けられた。これは、正常な判断だったと言えるのだろうか。
ききょう企画の借金返済が背景にあったのではないか──そう疑う声も出た。
それだけではない。一連のおかしな株式配当はさらに根深い問題を抱えている。時を同じくして久美子社長の父・勝久氏が高値で株を売り抜けていたのだ。
2015年に勃発した父娘の経営権争いでは、勝久氏と久美子社長は株主を振り向かせるため、いずれも株式配当を増やすことを発表した。久美子社長が2015年度の配当を40円から80円にすると言えば、勝久氏は120円にするといった具合だ。
久美子社長が勝利すると、実際に2015年度と2016年度には80円の高配当、大赤字だった2017年度にも40円の配当があったのは前述のとおり。それに応じて、1000円周辺だった大塚家具の株価は高騰し、高配当を発表した2015年2月からおよそ1年弱のあいだ、1500~1600円以上をつける日が続いた。
一方で、この時期に大塚家具は現預金を激減させている。2014年12月末の時点で115億円あったキャッシュは、2017年12月末には18億円になってしまった。もちろん赤字が続いたことが主因だが、同時に2015~2017年度のあいだ、株の配当金として40億円近くをあてていたこともまた事実なのだ。

そんな大塚家具の状況をよそに、創業者の勝久氏はせっせと自身の保有株を売っていた。表向きは勝久氏が立ち上げた新会社「匠大塚」の運転資金のためとされているが、果たして本当にそれだけなのだろうか。
大塚家具を長年ウォッチしてきたマーケット関係者は言う。
「2015年の経営権争いで退いて以降、勝久氏は合計60~70億円のキャッシュを手にしたと言われていて、その半分以上は大塚家具の株式売却によるものです。
勝久氏は2015~2016年度の株価高騰の時期に全ての株を売っているし、なにより大赤字だった2016年には、大塚家具が14億円で100万株の自社株買いを行っている。
まるで勝久氏の高値売却を後押しているかのような会社の動きは、利益相反を疑われてもおかしくありません。あの『世紀の親子喧嘩』という構図があったからこそ、できたことです」
たとえ勝久氏が大塚家具の経営を続けていたとしても、同社は遅かれ早かれビジネスモデルの限界に直面していただろう。
そうなる前に、勝久氏が株式の現金化に成功したのだとしたら──。

総額60億円ともいわれる勝久氏の資産は、いずれ遺産として子供たちに分け与えられていく。そのひとりに久美子社長が入っていることは想像に難くない。
「もし久美子社長が辞めて大塚家具の経営陣が刷新されでもしたら、これまでの不可解なキャッシュの流出に疑いの目が向けられ、追及されてもおかしくはない。久美子社長が何としても続投せねばならない背景には、こうした『お家の事情』があるのでは」(前出・マーケット関係者)
3期連続の赤字に陥っていた大塚家具に、手を差し伸べたヤマダ電機。今年2月から大塚家具と業務提携を結んでいたが、大塚家具の第三者割当増資を引き受けることで、約43億円で株式の51%超を握り、同社を子会社化した。
記者会見に同席したヤマダ電機の山田昇会長は、このタイミングでの子会社化について、「(大塚家具の)来期の黒字化を目指すところまでの手応えを感じた」と説明。売上が10%でも伸びれば黒字化できると考えているという。
はたして山田会長の見立ては正しいのか。そして、大塚家具の再起は果たされるのだろうか。