介護施設が留学生争奪 施設が学費全額支援 金沢の専門学校に業界注目

介護分野の人材不足が深刻化する中、介護福祉士を目指す留学生を卒業前から確保する金沢市の専門学校による新たな試みが、全国の福祉施設から注目を集めている。学費全額を施設側が負担し、卒業後に5年程度施設で働くことを条件に返済を免除する独自の奨学金制度を活用。質の高い人材を求める施設、学費負担を減らしたい留学生、学生を集める学校全てにメリットがある。12、13両日に石川県加賀市で行われた留学生向け説明会には、全国各地から採用担当者が集まり、「金の卵」に必死のアピール合戦を繰り広げた。
独自の奨学金制度
「テレビや冷蔵庫は高いでしょ。アパートに家電を用意します」「イスラム教のお祈りも1日5回大丈夫です」。熱気に包まれた会場で、担当者らがパンフレットや映像などを使って、施設の労働環境や待遇、福利厚生などについて説明した。
メモを取りながら真剣な表情で耳を傾けているのは「アリス学園」(金沢市)の日本語学科に在籍する約60人。同学科を卒業する来年度以降、同校の介護福祉学科(2年制)に進む留学生の学費約200万円の支援を、社会福祉法人などに呼びかける。参加者は2016年の初開催から年々増加。参加を制限した今年も秋田や神奈川など11道府県の27法人が参加。寄せられた「求人」は約70人分、奨学金は約1億4000万円分に上った。
人手不足に悩む施設の中には外国人技能実習生を採用する場合もあるが、説明会に参加した施設関係者は「あっせん業者への報酬などで負担が実習生1人当たり200万円を超すことも多い」と話した。
語学もできる即戦力
同校によると、介護福祉学科の定員80人の大半がインドネシアやベトナムなどからの留学生。日本語を習得し、介護の知識や技術を持った即戦力を輩出できるという。現在、同学科に在籍する留学生のほとんどが奨学金制度を利用し、既に卒業後の就職先が決まっている状態だ。
説明会に参加したインドネシア人のアグン・ヌグラハさん(31)は、地元で看護の専門学校を卒業。「奨学金はとてもありがたい。家族も呼び寄せ、できるだけ長く日本で働きたい」と夢を語る。
「日本人来ない」政府も推進
好調な景気などを背景に全国的に人手不足が進行し、中でも介護分野は10月の全職種の有効求人倍率(実数)1・45倍に対し、4・51倍に達するなど人手が特に足りない。
初年度の説明会から参加している北海道留萌市の医療法人は、奨学金制度を使って今春、初の外国人スタッフとなるインドネシア人男性1人を確保した。担当者は「介護職に日本人は来てくれない。最初は外国人の採用に不安もあったが、優秀で利用者にも優しく助かっている」と語った。【阿部弘賢】