職場の忘年会に参加しない「#忘年会スルー」が話題だ。
NHKニュースウオッチ9でも取り上げられ、「会社の飲み会はめんどくさい」「お金を出すのなら一緒に行って、楽しい人たちと飲んだ方が良い」「気を遣う時間があったらゆっくりしたい」という会社員たちの声が紹介された。
忘年会に気乗りしないサラリーマンが増えている iStock.com
実際に『ビジネスで「適当」と考える忘年会の回数と時間』の調査(※シチズン時計調べ)でも、そんな声を反映する結果が出ている。
社会人400人に聞いたところ、忘年会の適当な回数は「1回」(52.0%)が過半数。次いで「0回」(36.3%)、2回(9.0%)という結果に。また忘年会の適当な時間は「2時間」(52.3%)が過半数。次いで「1時間半」(17.5%)。「30分以内」という声も多かった(14.8%)。
出来るだけ少なく、時間は短く……職場の忘年会は「不人気」になりつつある。確かに個人的な経験から言っても、10年前くらいは、12月に入ると社内に加え、取引先、プライベートと忘年会が途切れなかったように記憶している。それが最近はめっきり減った。
では、各企業の社内忘年会はどうなっているのだろうか? 10年前とくらべて、“ゆるめに”なっているのだろうか?
銀行、保険、メーカー、広告、通信……など様々な業種の20代~30代会社員に「本当のところ」を聞いてみた。
◆◆◆
「10年前より忘年会の頻度も減って、内容も簡素化トレンドにあるのは間違いないですね」
こう話すのはタイヤメーカー社員(30代後半・男性)。社内忘年会の費用は全額会社持ちで参加も任意だそうだ。「パワハラの問題や働き方改革で若手社員はかなりケアされていますね。忘年会は形式的に開催されるだけなので楽です」とのこと。
やはり忘年会は変わりつつあるのか。化学メーカー社員(30代後半・男性)は「じつは私、“忘年会スルー”します」と明かす。
「もしかしたら今年出席しないのは私だけかもですが、小さな息子との時間を大事にしたくて。あとは基本自己負担なのも参加する気をなくさせます。傾斜配分なので中堅社員だと2次会を入れて1万5000円くらいでしょうか」
会費が自己負担か会社負担か、というのは「忘年会スルー」したくなる要因のひとつだろう。今回聞いたなかで、メガバンクや保険、通信などでは「傾斜配分」(上司が多めに払う)が多かった。金額は1次会で20代若手社員だと3000円前後、30代中堅社員だと4000円~5000円がひとつの目安のようだ。
「総合職若手3000円、一般職2000円」(メガバンク/30代後半・男性)「中堅社員で4000円くらい」(飲料メーカー/30代後半・男性)「20代前半の若手社員は1500円~2000円」(通信サービス/20代前半・女性)「部長1万円~新入社員5000円」(損害保険/30代前半・男性)
一方で会社によっては忘年会自体が無くなったという話も聞こえてくる。
「参加費なし、自由参加でビンゴと若手出し物アリの全社的なクリスマスパーティが数年前になくなってしまいました。経費削減と働き方改革の波なのでしょうか」(食品メーカー/30代前半・女性)
「数年前に会社がフリーアドレスになって、雑談する雰囲気がなくなり、人間関係が希薄に……。前は近くに座るチームで『飲み会、行くよな』というゆるいつながりがあったのですが、今年は上司が『忘年会やる?』と聞いたらみんなが下を向いて……中止になりました」(広告制作会社/30代前半・女性)
とはいえ「まだまだ全部署ガッツリ忘年会をやっている」という会社ももちろんある。アルコール類を扱う飲料メーカー社員(30代後半・男性)が語る。
「家庭の事情などがある場合は欠席可ですが、基本的に全員参加です。お店選びや当日の司会などは基本的に一番下の若手数人が担当します。
お酒メーカーとしては『忘年会スルー』的な世間のトレンドは気になりますね。とはいえウチも2次会が事前にスケジューリングされなくなった点は最近の大きな変化でしょうか」
年功序列のイメージのある銀行業界はどうだろうか。メガバンク新入社員(20代前半・女性)はこう話す。
「支店ごとに忘年会があります。強制とは言われないけれど、年次が低いほど参加するのが当たり前な雰囲気です。ビンゴ大会があって、景品は予算内で新入社員が揃えます。
あと1年目は毎年何かしら“出し物”をやるのが恒例になっています。今年はお店の都合でNGになりましたが、バブリーダンスをする予定でした」
忘年会での「出し物」というのは若手社員にとって気が重いものかもしれない。別のメガバンク社員(30代後半・男性)の証言。
「新入社員・若手社員の出し物は任意でやることになっています。私の部署では今年は出し物なしになりました。時代の流れで、出し物強制が禁止になったのは5年前くらいでしょうか。その年の流行のダンスが多くて、私も当時カンナムスタイルを踊った記憶があります……」
ただ今年も若手に出し物を期待する会社も。「新人は1人1つ出し物をすることになっていて、三線を披露することになりました。昨年、グループ会社では女子社員が欅坂を踊っていましたね」(通信サービス社員/20代前半・男性)
極め付きは出し物用の企画書を「1カ月半前には準備する」という広告代理店グループ会社の若手社員(20代前半・女性)だ。
「今年はラグビー日本代表が盛り上がったので、それにちなんだダンスをします。忘年会まで1カ月半、本業とは別で打ち合わせを繰り返してきました。広い会場では縁日も企画しています。告知ポスターを社内で掲示したり大変でしたが、じつは新年会の準備がさらにヤバいんです……」
忘年会へのスタンスにも各社のカラーが滲み出ていることが実感される。最後に「では忘年会に意味はある?」という質問をしてみた。
「普段話さない人と年1回くらいは食事しながら話したほうがその後仕事を一緒にやる際楽になる」(メガバンク社員/30代後半・男性)
30代の中堅社員は上記のように忘年会に肯定的な意見が目立った。興味深かったのは数年前に損害保険会社から金融ベンチャーに転じた中堅社員(30代前半・男性)の意見だ。
「ベンチャーに移ってきて忘年会への“コミット感”の違いを感じます。前の会社は忘年会の日には『どう仕事を切り上げて、忘年会にコミットするか』が問われていました。でも今の会社では忘年会でも遅れるのが当たり前。仕事が最優先でしょ、みたいな。
それでも個人的には前の会社で叩き込まれた『飲み会を企画~実行する』のって結構大事な仕事だと思っています。全体から細部に渡るまでものごとを決めていき、参加する人に楽しんでもらえるよう配慮するのは仕事の基本なのかなと」
一方で20代社員からは忘年会への冷めた意見が集まった。
「人間関係のために、出席せざるを得ないと思っています」(通信サービス社員/20代前半・男性)「あって当たり前だと思っていたので深く考えたことはないが、意味なさそうだと思います」(メガバンク/20代前半・女性)「もはや欠席はできませんが『忘年会スルー』羨ましいです」(広告代理店グループ会社/20代前半・女性)
現在の20代社員が中堅社員になるころ、はたして社内忘年会の文化は残っているだろうか。
(「文春オンライン」編集部)