有珠山の休止期間は約1万5000年! 江戸時代に「覚醒」ドーム形成判明

2000年に噴火した有珠山の火山活動歴について、北海道内の研究者が地質学的に再検証した研究結果を今年相次いで発表した。形成時期がはっきりしていなかった小有珠ドームが、江戸時代にあった2度の噴火で形成されたことが判明。外輪山を形成した先史時代の山体崩壊が約1万6000年前だったことも分かり、国内の火山としては1万年を超える休止期間を経て活動を再開した極めて珍しい火山であることが明らかになった。
有珠山は約2万年前から噴火を繰り返してきたとされ、00年噴火を受けた調査では18世紀前半にも噴火(先明和噴火)があったことが判明。有史以降では1663年の活動再開以来、9回の噴火が確認されている。丘状に表出した溶岩ドームが複数あり、00年噴火では地中内で盛り上がった潜在ドームがふもとで形成されている。
今回成果を発表したのは北海道大の中川光弘教授(火山学)と松本亜希子・技術職員で、山頂火口内にある小有珠溶岩ドームなどにある噴出物の化学組成を解析した。その結果、これまで写生図などの古記録から1769年の明和噴火か、それ以前の形成とみられていた小有珠は、先明和噴火で初代(先小有珠ドーム)が形成されていたことを解明。続く1822年の文政噴火で初代が破壊された後、現在の小有珠溶岩ドームが新たに形成されたことを明らかにした。
一方で、同じ山頂部にあるオガリ山潜在ドームは文政噴火で形成されたとみられていたが、それ以前の明和噴火だったことが分かり、形成時期が小有珠と入れ替わることになった。

先史時代の活動歴については、室蘭工業大の後藤芳彦准教授(火山防災工学)が新たに放射性炭素による年代測定法を用いて、周辺の土壌を分析。噴火活動の開始時期を1万8000~1万9000年前と判定した。「善光寺岩屑なだれ」と称される山体崩壊を引き起こした噴火については、1万6000年前(従来は7000~8000年前)だったと結論づけた。
これにより、有珠山は活動を再開した1663年まで約1万5000年の休止期間があることが分かった。ただ、有史時代の噴出物は先史時代に比べて粘性が強く、組成の異なるマグマによる別の火山活動と考えられると分析している。
こうした結果を踏まえた今後の噴火活動について、道防災会議火山専門委員を務める中川教授は「有珠山は依然、有史以来の活動期の中にあるが、噴火規模は17世紀以降小さくなってきており、この傾向が続くと多くの火山のように、長期の休止期に入る可能性がある。そのような長期活動予測のためにも、次の噴火の観測研究が重要だ」と話している。【昆野淳】
有珠山の主な噴火歴
(噴火した年代と形成山体)
1万8000~1万9000年前(活動開始) 成層火山
1万6000年前(善光寺岩屑なだれ) 外輪山
<活動休止>
1663年(活動再開) ―
18世紀前半(先明和噴火) 先小有珠溶岩ドーム
1769年(明和噴火) オガリ山潜在ドーム
1822年(文政噴火) 小有珠溶岩ドーム
1853年(嘉永噴火) 大有珠溶岩ドーム
1910年 明治新山潜在ドーム
1943~45年 昭和新山溶岩ドーム
1977~78年 有珠新山潜在ドーム
2000年 潜在ドーム