「おいしいコーヒーと優しい空間」難病の妻ら、カフェ開店 北九州

北九州市八幡西区のJR折尾駅近くの幹線道路から一歩入った路地に今月、小さな喫茶店が開店した。運営するのは、同市の落水文子さん(38)と大場紗代さん(36)。2人とも難病や重病と闘う夫との二人三脚の日々を送っている。飲食店を運営するのは初めてだが、病気を持つ人やそのパートナーをはじめ、さまざまな境遇の人が気軽に集える「優しい空間」にできればと願っている。
落水さんは、夫洋介さん(37)が2013年ごろ、全身の筋肉が徐々に硬直していく原因不明の難病、原発性側索硬化症(PLS)を発症した。洋介さんと小中学校の同級生だった大場さんと夫崇生さん(36)は洋介さんの電動車椅子取得に協力するなど支援。洋介さんは現在、同市の社会福祉法人で働きながら、各地に赴き自身の生き方などの講演活動をしている。
一方、会社勤めだった崇生さんは18年に脳梗塞(こうそく)で倒れ、意識不明に陥った。一命は取り留めたが、仕事を失った。自宅でふさぎ込む日々を送っていたところ、洋介さんが支援者らと定期的に開く会合に誘い出した。
「病気のことはオープンにした方がいい。人に頼るのは悪いことではない」。崇生さんらの支えで前を向けた洋介さんが、今度は崇生さんの力になりたいと声をかけた。洋介さんの支援者らが集まる会合に参加した崇生さんは経験豊富な理学療法士と出会い、リハビリ治療が奏功。包丁を使うなどの細かい動作がうまくいかなかったり、足元がふらついたりしていたが改善し、職業訓練校にも通えるようになった。

そんな中、会合を開いてきたレンタルスペースが閉まることになり、洋介さんと崇生さんが新たなカフェを計画。「人とつながれる場所にしたい」と支えてくれた互いの妻も巻き込んだ。文子さんと紗代さんは当初及び腰だったが、話し合いを重ねるうちに互いに「この人となら一緒にやっていける」と挑戦を決めた。
折尾駅近くのバーが営業時間外の店舗を貸してくれることとなり、開店資金を抑えることができた。今月2日に「おりお喫茶」が開店。初日はメニューのカレーが昼間に売り切れるなど上々のスタートだった。
洋介さんは「自分が発症した時は病院や役所をたらい回しになった。当事者やその家族が集い、悩みを打ち明けられる場になればうれしい」。文子さんも「パートナーが病気になって悩む人も多いはず。誰もが気軽に来られて、楽しくおしゃべりできる店にしたい」と話している。
おりお喫茶(北九州市八幡西区折尾1の6の8)の営業は月・水・金曜の午前11時~午後4時。【佐野格】