ブラックな労働環境、厳し過ぎる部活動、なくならないいじめ………。子どもの成長を支える学校を巡って、ニュースではさまざまな問題が取り上げられています。実際に働いている教員は、どのような思いを抱いているのでしょうか。
本記事は、公立校の中学教員に「一般教員として感じている“学校の問題点”」を語ってもらう連載企画。今回は「生徒の個人情報の取り扱い」「意義を失った修学旅行」などについて、Aさん、Bさん(仮名)にインタビューしました。
●生徒の個人情報を扱う職員室、私物のPC持ち込みは「暗黙の了解」
―― 以前、チラッと「職員室にPCが数台しかない学校がある」という話をしてたよね
A:そうね、ヒドイところだと職員室で使えるPCが数台しかなくて、各学年の教員たちが1つずつシェアして使ってたりする。
―― でも、今どきPCなしで仕事なんて考えられないでしょ。プリント作るのにも使うだろうし
A:だから、みんな私物のPCを持ってきてる。でも、学校のPCじゃないと印刷できなかったり、私物のPCとデータのやりとりができなかったりして、面倒なんだよね。
いったんメールで送ったりなんだり、あの手この手でデータを迂回させないとならない。「学校のPCが1台だけUSBメモリを挿せて、私物のPCで作成したデータをそこから取り込む」なんて場合もあるけど、そういう1台しかないPCは他の教員も使うから埋まりがち。プリントを1枚印刷するのに、何十分も待つことになる。
B:学校のPCが1人1台あっても、データが引き出せないようになっていたり。それだと仕事が持ち帰れないから、私物のPCを持っていくのが当たり前になっている場合がある。「仕事するのは私物のPC、学校のPCは印刷に使うだけ」みたいな。
―― セキュリティ的にいろいろとマズくない? 生徒の個人情報を扱っているわけで、そもそも私物のPCが持ち込めることに驚いた。今はUSBメモリも使わせない職場も多いと聞くよ
A:……それを言ったら、もう教員の仕事は成り立たなくなってしまう。
B:本当は良くないことは分かってるんだけど、暗黙の了解。PCの台数が足りなかったり、業務量が多過ぎて持ち帰らないと終わらなかったり、学校のPCだけで仕事を片付けるなんて現実的じゃない。
A:「サボりたい」「生徒の個人情報を悪用したい」のではなく、「そうでもしないと仕事が終わらない」「日付がまわっても帰れない」から仕方なくやってるんだよ。
私物のPCを使わないと話にならない。だけど、ルール外のことをしてるから、そこから生徒の個人情報が流出したら個人責任、校長の管理責任になってしまう。もしひったくり被害にあってUSBメモリが盗まれたとしても、個人情報を漏らしたとして処分される。
「個人情報の保護というのはそういうものなんだ」というのは分かってる。俺だってシステムとして破綻してると思うよ。でも、そんな厳密な運用をしていたら、この仕事はできなくなってしまうというのが現状だと思う。
●生徒用タブレットPCを導入しても、“古さ”が抜けない学校の体質
―― 話を聞いていて思うんだけど、いろいろと“古い”よね。PCが人数分ないとか、校舎がボロボロだとか、新しい備品が買えないだとか……
A:“古い”系でいうと、教室にネット環境がない学校とか? 「調べ学習のために生徒全員にタブレットPCを持たせてるけど、ネットで調べ物するときはPC室に移動してそこのPCを使わないとダメ」という風に、おかしなことになる。
B:今求められてる「情報リテラシー」「生きる力」「調べる力」とかを考えたら、ちゃんとやるべきところだと思うんだけどね。
A:自宅は月額数千円でできるんだから、教室でWi-Fi使えるようにしたってそんな高額にはならない気がするんだけどね。全校生徒が一斉にアクセスできるようにするのはアレかもだけど、プールみたいに各クラスが順番に使えるようにするくらいはさ。
でも、そういう予算は取らないんだよね、「必要がない」とかいって。そんなこんなで、せっかくのタブレットPCが写真撮影、パワポ作成くらいにしか使えなくなっちゃう。
●修学旅行をやる意味はもうない?
A:古いというか「時代遅れだからもうやらなくていいんじゃない?」と思うのは修学旅行。時代的に、やる意味が薄れてる。
―― そもそも修学旅行って、何でやってたの?
A:例えば、昔、日本が貧しかった時代には「修学旅行=人生初の旅行」という人も多くて、「旅行を経験させる」という意味合いがあったらしい。「地元から全く出ない」「電車に全く乗らない」みたいな生き方が普通だったころは必要だったのかもしれないけど、今はそういうご時世ではないでしょ。
家庭の事情なんかもあるから一概には言えないけど、人によっては就学前からハワイだのなんだのと行ってて。現代の日本で「学校で旅行を経験させる意義とは何なのか」というのは、考え直していいと思う。
―― 今だったら「公共交通機関を使う」「集団行動を体験させる」みたいな狙いもあるんじゃない?
A:それも微妙なんだよ。5年くらい前かな、インバウンド需要が高まって「爆買い」が流行語大賞に入ったころから観光地は外国人がスゴくて。京都なんて人が多過ぎて、生徒たちがバスに乗れないわけ。
計画通りに行かず、帰りが夜中になってしまうと危険だから、今の修学旅行はタクシー移動だよ。運転手さんに「次は清水寺」「次は銀閣寺」と連れていってもらって、ついでに簡単に案内してもらうスタイルが流行ってる。タクシーの運転手さんにおまかせできるなら、教員側も安心だしね。
―― ごめん、普通に「今の子、うらやましいなあ」と思ってしまった
A:だよね(笑)。でも、もはやただのグループ旅行でしょ。学校でやる意味なくない?
(続く)
※本企画は、現役教員の声をそのまま記事化したものです。実際の労働環境などは自治体、学校などによって異なる可能性があります。