「インフルエンザと風邪」2つのウイルスに同時感染する可能性 4万人調査

インフルエンザの流行入りが早かった今年、熱や咳が出たり、悪寒を感じると「もしかして…?」と疑って、診療所に駆け込んだ人も少なくないはず。鼻や喉の奥の粘膜を、細長い綿棒のような器具でこすりとる検査で「陰性」判定がくだれば、とりあえずは一安心だが、一方で風邪の治療はしなければならない。
一言で風邪と言っても、原因はウイルスから細菌までさまざまだが、日本呼吸器学会によると風邪の80~90%はウイルスが原因だという。主な原因はライノウイルスやコロナウイルスに次いで、RSウイルスやアデノウイルスなどと言われるが、ではインフルエンザと風邪に同時に感染する可能性はないのだろうか?
今月16日、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された論文によると、スコットランドのグラスゴー大学ウイルス研究センターのチームは、2005年から2013年までの9年間にわたってインフルエンザの流行シーズンに急性呼吸器疾患で医療機関を受診し、ウイルス性呼吸疾患の疑いで喉と鼻の粘膜検査を受けた4万4230人分のデータを分析。
インフルエンザと非インフルエンザの11種類のウイルスのうち、どれに感染しているかを調べた結果、35%が少なくとも1種類のウイルスに感染、8%が2種類以上に感染していた。とりわけ研究者の興味を引いたのは、インフルエンザが流行中の冬には、風邪の代表的なウイルスであるライノの感染率が減少することだ。

さらに個々の患者について詳しく分析してみたところ、A型インフルエンザの患者は、他の型のウイルスに感染した患者よりも、ライノウイルスに感染する確率が70%近く低かったという。
現時点では理由はわかっていないが、論文執筆者のひとり、セーマ・ニクバッシュ研究員は「ライオンやブチハイエナがエサを奪い合うのと同じように、呼吸器に感染するウイルス同士でも細胞をめぐって競争しているのかもしれない。特定のウイルスに対する免疫反応によって、他のウイルスがつけいる隙が無い可能性があります」と指摘している。
従来のウイルス学では、1種類のウイルスを単独で研究する傾向にあったが、グラスゴー大学のウイルス研究センターでは、インフルエンザやライノウイルスのように別の種類のウイルスが、どのように相互作用するかを理解するための研究を行っているという。
チームを率いるパブロ・ムルシア医学博士は「相互作用を研究することで、季節によってさまざまなウイルスが循環する理由がわかるかもしれません。ウイルス同士が牽制しあってお互いを阻害するメカニズムがわかれば、ウイルスを標的にするより、良い治療方法が開発できるかもしれません」と期待を寄せている。