特許巡り不正行為 前副学長を懲戒解雇 京都工芸繊維大

国立大の京都工芸繊維大(京都市)は12日、知的財産の責任者の立場を利用し、自身が設立したベンチャー企業に利益還元できるよう特許に関する不正行為を行ったとして、前副学長の森肇教授(60)を同日付で懲戒解雇したと発表した。金銭的な損害は算定不能で、大学は刑事告訴も検討している。
大学によると、森氏による薬剤カプセルの技術について、森氏が設立したバイオベンチャー「プロテインクリスタル」(PCC)と大学が2007年、共同で特許を出願し認められた。
しかし、森氏は無断で大学の持ち分25%をPCCに移し、15年に海外の企業にこの特許を独占使用させるライセンス契約を結んだ。
また、大学が単独で出願すると決定した森氏の別の発明について、森氏は17年、大学を含めず自身と海外企業などを出願人として出願し、大学は権利を失った。これらの不正行為で、大学が受け取るべき特許使用料がベンチャー側に渡っていた可能性がある。
さらに、一連の行為を隠蔽(いんぺい)するため事務局職員に指示を出すなどしており、計5件の不正が認定された。
18年に監事が指摘し調査していた。森氏は大学に対し「大学外での(研究による)発明だ」などと否認したという。小野芳朗副学長は記者会見で「一人に多くの権限が集中したことに原因がある」と謝罪した。【菅沼舞】