東日本大震災などで犠牲になった岩手県大槌町消防団員の追悼碑「消防義魂碑」が5日、同町大槌の消防会館前に約9年ぶりに再建された。消防団員の減少は著しいが、参列者は「先輩や仲間の献身的な働きを忘れない」と誓いを新たにした。
町などが約240万円をかけて制作した高さ約290センチの白御影(みかげ)石製で、旧大槌中学校敷地に建てられた消防会館前に再建された。
元の義魂碑は昭和三陸大津波の翌1934(昭和9)年3月、中心部の江岸寺境内に建立された。1月初めの出初め式に代わる「防火祈願祭」に合わせて、消防団員らが物故者の冥福を祈ってきた。
2011年3月の津波では、水門を閉めようとしたり住民の救出や誘導に当たったりした消防団員16人が殉職。同じく消防屯所など8カ所とポンプ車など資機材が流失し、義魂碑も流失した。
町の団員は定員を約100人下回る165人にとどまる。昨秋の台風19号豪雨の際は、氾濫寸前の大槌川沿い住民の避難が進まなかったことや、団員への過重な負担といった課題が指摘された。
団長の越田政美さん(73)は「碑を前にすると、明治以来活動してきた先人の義勇、郷土愛に胸が熱くなる。災害に強い安全・安心の町にしたい」と話した。【中尾卓英】