皆さん、今年の年賀状はどうされましたか?(写真:sasaki106/PIXTA)
こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ」の大野萌子です。
今年の年賀状は、どうされましたか?
昨年暮れには、年賀状をやめたいと思うが、どうしたらよいか迷っているという相談をいくつか受けました。
「今どき年賀状なんて」という否定派、「日本の古式ゆかしい伝統文化は継承するべき」という肯定派、ほかにもさまざまなご意見をお持ちの方がいます。
令和になって初めてのお正月ということで、普段は年賀状を出さないけど今年は書いたという方もいらっしゃるかもしれません。いずれにしても年始の挨拶は、気持ちよくやり取りをしたいものですが、この年始の挨拶でさまざまな思惑が交錯し、悩ましい思いをされた方も多いと思います。
この連載の記事一覧はこちら
少し前まで、お正月明けの相談では、結婚式や子供の写真の年賀状をもらって憂鬱――という内容が多く聞かれました。婚活中や妊活中の方は特にナーバスになってしまい、それが原因で相手と疎遠になるといったケースもあるほどでしたが、最近はSNSなどで写真を目にする機会が増え、この時期に限ったことではなくなりました。
そもそも挨拶というのは、儀礼的な要素も強くありますが、現実には、自分のほうから心を開き相手に近づくという意味合いがあり、お世話になっている人や親しい人、つながりたい人、連絡を取りたい人に自分の思いを伝える機会でもあります。普段連絡を取り合っている仲では、日ごろのお礼だったり、疎遠になっている仲では、連絡を取る格好の機会ともなります。
そういう意味では、思いがこもっていれば、年賀状というカタチにこだわらなくてもよいのではないでしょうか。登録された宛名に印刷の年賀状が送られてくるだけなら、個別のメッセージをメールやSNSでやり取りしたほうがよいかもしれませんし、実際に、一言も個別メッセージのない年賀状などいらないという声も聞かれます。
最近は、「今年で年賀状をやめます」というメッセージを送る「年賀状じまい」をされる方も増えています。急に出さなくなるのは、失礼になるのではといった思いや、自分自身のけじめをつけたいからなど、思いはさまざまなようです。それで自分の気持ちが整理できるのでしたら、それもありかと思いますが、年頭から縁切りのようなメッセージをもらうのは不快といった否定的な意見もあり、人の受け取り方は本当にさまざまです。
これだけ多様化が叫ばれているのですから、年始の挨拶の仕方は人それぞれでよいはずなのに、自分と同じ行動をとらないことに対して、非があるようにいう方もいて、それにより傷つく方もいます。
私はこういう理由で年賀状出しません、とSNSなどで宣言するというようなことも増えています。年末年始はとかく忙しいですし、普段、密に連絡を取っている相手に、あえて出す必要がないと考えたり、形骸化した年賀状だけの付き合いに価値を見いだせないのは、まったく問題はないと思います。
しかし、出している人に対して「非効率」などと批判をするのは、自分がどう思われるかというような不安や、自分と同じでないことを受け入れられないという気持ちが隠れているようにも思います。自分の選択に対し自信を持てず、他人を批判することで、自分を正当化しようとしているように見えなくもありません。
要するに、年賀状の賛否にこだわるということは、それだけ年頭の挨拶を大切に思っているからこそともいえます。
人を傷つけない伝え方にI(アイ)メッセージというものがあります。文字通り「私」を主語にした伝え方です。「私は、こうする」「私は、こうしたい」といった自分の思いを伝える方法です。反対に「あなた」を主語にしたものをYOUメッセージと言います。「今どき○○なんて、(あなたは)時代遅れ」といわれたら、不快に思う方も多いと思います。YOUメッセージは、脅迫や威圧を感じるからです。
「I’m OK. You’re not OK.(私はいいけど、あなたはダメ)」では、お互いを尊重する関係性は築きにくいです。年賀状を不要と思う人がいて、年賀状を楽しみにしているという人もいます。
「I’m OK. You’re OK.(あなたも私もOK)」になれたら、もっと気持ちも柔軟に、相手を受け入れることができるのではないでしょうか。
どんなことでも、よかれと思ったことが相手に伝わらないこともありますし、悪意がなくても相手を傷つけることがあります。そんなとき、私はこう感じたと伝えることは、コミュニケーションにおいて大切なことですが、あなたが悪いと一方的に否定するのは関係性をつくるうえで障害となります。
年賀状の賛否を論じるにあたり、多様性を認め、お互いを尊重することを考える機会にしていただけたらと思います。「みんな違ってみんないい」と感じるためには、心の余裕が必要です。
自分を大切にすることが、相手を大切にすることにつながっていきます。
ちなみに、筆者は5年ほど前に年賀状をやめました。
年賀状を出した方にとっても、出さなかった方にとっても、よい1年となりますように。