神村学園通信制、中3生を「高1部員」で活動させたか 中学通わず、市教委に指導権限なく

鹿児島県のスポーツ強豪校「神村学園」高等部が兵庫県淡路市に開設した通信制教育サポート施設「淡路島学習センター」で必要な学習指導が放置されていた問題で、センター側がSNS(会員制交流サイト)上で中学3年生を高校1年のサッカー部員と紹介し、練習や資金集めなどにも参加させていた疑いのあることが7日、関係者への取材で分かった。中3生は在籍する同市内の中学校にも通っていなかった。センター側のずさんな運営が背景にあったとみられ、市教育委員会も中学生のセンターでの活動実態を調査する方針。(神戸総局取材班)
淡路島学習センターは、神村学園高等部の単位制・広域通信制課程が地元業者と提携し、昨年4月に開設した全寮制の教育サポート施設。高校の勉強との両立でプロサッカー選手を目指すとうたい、新入生22人が入学した。
ところが、卒業に必要な学習指導が放置され、食事の質も量も不十分だったなどとして、昨年8月末までに10人が自主退学。元生徒と保護者18人が昨年12月27日、学園側とセンター側に総額2131万円の損害賠償を求める訴訟を松江地裁益田支部に起こした。
関係者によると、センター側はサッカー活動の様子をSNS上で公開し、メンバーの中3生を「神村学園淡路島サッカー部1年」と紹介。平日の練習に参加させ、チラシを作ってグラウンド建設の資金集めにも取り組ませていたという。
センター側は取材に対し「神村学園淡路島の生徒ではなく、練習参加生として活動体験もさせていた」と説明。ただ、淡路市教委によると、この生徒は昨年2月に県外から淡路島内の中学に転入したまま一度も登校せず、平日の日中もセンターへ通っていた。
市教委には学園側への指導権限がなく、是正を求めても応じなかったという。市教委幹部は「将来の夢などを考えると、生徒へのアプローチが難しかった」ともらす。
神村学園高等部の単位制・広域通信制課程の橋本徳二教頭は取材に「本来中学校で勉強している時間帯にセンターの活動に参加させているのであれば問題だ」と回答し、調査する意向を示した。
■中学校に通わず 市教委に指導権限なく
中学3年生が「淡路島学習センター」に通い、中学校に登校していなかった問題は、地元の淡路市教育委員会も把握しながら対処できなかった。センターに対する指導権限が学園本校を管轄する鹿児島県にあるためで、市教委は“蚊帳の外”に置かれていた。専門家は権限のあり方について改善を訴えている。
市教委によると、昨年2月に転入した際、生徒の保護者側が「中学ではなく神村に通う」との意向を示した。このため、市教委は「義務教育なので間違いがないように」と学園本校に伝えたが、生徒は転入後、一度も中学校に登校しなかったという。
文部科学省によると、神村学園は約30カ所にのぼる教育サポート施設を全国各地に展開しているが、指導権限は本校を管轄する鹿児島県に集中している。県の担当者は「(センター運営について)これまで不適切との報告が上がってきたことはない」とする。
文科省の担当者は「中3生を高1生として扱っているのが事実であれば、大きな問題だ」と強調するが、淡路島学習センターのような教育サポート施設は各学校法人が全国約2500カ所に開設。それぞれに対し、管轄自治体の目が届きにくいことが、問題の放置につながるとの指摘もある。
通信制教育に詳しい山梨大学大学教育センターの日永龍彦教授は「管轄自治体が単独で各施設の問題に対応するのは無理がある。国が音頭を取って指導すべきだ」と主張している。