抗争の行方占う髙山若頭 徹底した「信賞必罰と情報統制」

【山口組分裂と抗争のキーマン 高山清司という男】#1

3分裂して抗争を続ける山口組は7日、6府県から初の「特定抗争指定暴力団」に指定される。組織として事実上の活動休止を余儀なくされる。

そうした中、足かけ6年にわたる抗争の行方を占うキーマンとされるのが髙山清司若頭だ。

2019年10月18日、5年3カ月ぶりに府中刑務所を出所する前後には、神戸と尼崎で神戸山口組系組員2人、直系組長1人への殺害事件が起きるなど、“指揮官”の帰還に6代目山口組の戦意はにわかに高揚しているかにみえる。

当局をして「髙山若頭が服役しなければ分裂は起きなかった」と言わしめ、分裂下の風景を一変させた髙山若頭とは一体どんな人物なのか。

その辣腕ぶりの一端がうかがわれる“事件”が年の瀬に起きている。6代目山口組のある直系組長が「情報漏洩」を理由に執行部から謹慎処分を受けたのだ。事情通が言う。

「昨年、神戸山口組から6代目に移籍して、新たに直参となった組織の杯の書状の画像を傘下組員がSNSで拡散したことをとがめられ、管理不行き届きとされたんです。6代目山口組に実害はなく、いわゆる一罰百戒のための警告的な処分だったようです」

髙山若頭の特徴の1つは、信賞必罰を徹底していることだ。効果はテキメンで、同時期に全国各地の直系組織に配布された山口組機関紙「山口組新報」の内容が一向にマスコミに漏れない、という事態に。もとより「マスコミとの接触禁止」は山口組の家訓だが、髙山若頭の出所以後、これが徹底されるようになった。

直系組長たちが地域ごとに集まる会合の場所も極秘にされる傾向が強まっている。前出の事情通が言う。

「『新報』にしても、五十数団体ある直系組織ごとに内容を一部改変して、マスコミに流出した場合、漏洩源が瞬時に追跡できるように細工が施されています。6代目体制で創刊されて6年以上も経ちますが、執行部以外、最近まで誰も気がつかなかったそうです」

髙山若頭が「情報統制」を重視しているのは明らかだ。

6代目山口組では各地域ごとに所属する直系組長が集まる“方面会議”的な会合が定期的に開催されているが(現在は事務所使用制限と特定指定のため休止)、その地域に所属する最高幹部とは別の執行部メンバーが「お目付役」として必ず1人派遣されるようにもなった。

山口組には田岡一雄3代目が掲げた「和親合一」(ことにあたってはまず一致結束して内を固める)という綱領があり、6代目側は4年連続「組指針」としている。この綱領が掲げられたのは田岡3代目が全国制覇を呼号した時代だが、髙山若頭にとっては現在も戦国時代が続いているのだろうか。=つづく

(山田英生/ライター・編集者)