「モノマネ動画」が大きな話題となり、昨年SNSで爆発的な人気を集めたくつざわさん。「3日で5万人フォロワーが増えた女子大生」と呼ばれたこともあるようです。最近は「モノマネ動画」とはテイストの違う「note」での発信や、マーケターとしてイベント登壇をしている姿を見るようになりました。今回はそんなくつざわさんに、R25世代が身につけるべき“マーケティングセンス”を学びにいってきました。〈聞き手=ほしゆき〉
【くつざわ】1999年生まれ、千葉県出身。2019年4月に投稿した「言葉は特に発さず、下唇を噛んでクネクネしているだけなのに 鼻息で持ち帰りOKオーラを出すことに慣れてしまった1年女子大生の秋」というモノマネ動画が、Twitterで500万回以上再生され、3日でフォロワーが5万人増えたことで話題に。現在はマーケター、プランナーとして活動
ほし:くつざわさん、今日はよろしくお願いします!昨年はすごい1年だったと思いますが…あらためて、今現在の目標とかってあるんでしょうか?
くつざわさん:4年後に『情熱大陸』(TBS系)に出たいですね!
ほし:おぉ、『情熱大陸』!!
くつざわさん:正確には、母が昔から「自分の子どもとテレビに出るのが夢だ」と言っていて。母が相当な苦労人で、波乱万丈な人生を送ってきたので、ドキュメンタリーに出させてあげたいなと。なので、恩返しという意味で『情熱大陸』に出たいと思ってます。
ほし:なるほど。しかしなぜ「4年後」に?
くつざわさん:私、「若いうちに何かしらで大成したい」とずっと思ってるんです。かっこいいじゃないですか!今20歳なので、4年後は24歳でギリギリ「20代前半」。5年後になっちゃうともう25歳ですから。「若いうち」とは言えないかなって。
え、ええ~…生き急いでますね…
くつざわさん:今はどうしても「モノマネでバズった人」って言われることが多いので、それ以外の肩書きで大きなことを成し遂げて、目標を達成したいと思っています。
ほし:なるほど。
ご家族を大事にしているくつざわさん
ほし:今日は、そんなくつざわさんに「マーケティングセンス」について教えてもらいたいです!くつざわさんはもともと「マーケティング」に興味があったんでしょうか?
くつざわさん:そうですね、動画を投稿しはじめたころから、どうやったらより多くの人に見られるか?拡散されるか?ということを考えるのが好きだったんです。
ほし:有名な「鼻息で持ち帰りOKオーラを出す大学1年生女子」の動画は、どうやってバズらせたんでしょうか…?
くつざわさん:「ユーザーが見る流れ」を意識しました。Twitterって、まず書いてある文章を読んで、次に画像や動画を開く流れじゃないですか。
ほし:はい…
くつざわさん:つまり、見てもらいたい部分に誘導できるんです。「持ち帰りOK女子」なら、「下唇を噛む」「クネクネしている」「鼻息」とキーワードを書いておく。そうすると動画の編集クオリティが低くても、「たしかにクネクネしてる」「鼻息(笑)」みたいに、“おいしい部分”をちゃんと見てもらえるんですよ。ツイッターの動画はこってりした編集よりはチープなもののほうが好まれるので、ユーザーが気楽に見られるような動画になるんです。
ほし:あ~、なるほど。たしかにそこに注目して見てました…
くつざわさん:YouTubeの場合は、サムネイル画像を見て、タイトルを見て、動画を見てから概要欄を見るような流れですよね。同じモノマネ動画をYouTubeにアップしても、全然拡散されてないと思いますよ。
ほし:モノマネ動画は「女子大生あるある」がすごく多かったと思うんですが、それはどういう狙いだったんですか?
くつざわさん:投稿をしはじめたころの私のフォロワーは、ほとんどが大学生だったんです。いかに拡散されるかはフォロワー次第なので、大学生を含めたなるべく多くの人が好きなものは何か?と考えたときに…「マウンティング」だと思ったんです。
ほし:「マウンティング」!(笑)
くつざわさん:「こういう女いる~!(笑)」って、コメントをつけて引用リツイートしたくなるような動画をたくさんアップしつづけたんです。自分語りがしやすい動画にすると、自分の体験と重ねていろんな人がコメントをくれるんです。今でも、動画を撮影するときは「ツッコみたくなるポイント」を意識してつくっています。
ほし:ツッコみたくなるポイントというと…たとえば?
くつざわさん:「久しぶりにギター持った!」って弾き語りを匂わせておいて、ギターをまったく弾いてないとか、壁に穴が空いているとか。
めっちゃ久しぶりにギター持った! https://t.co/7UCOPLxgI9
ほし:最後、ギター転がってるじゃないですか!(笑)
くつざわさん:こんなふうにみんなツッコミを入れてくれるんですよ(笑)。リプライが増えれば、リプライしたユーザーのフォロワーのタイムラインにも表示されるので、インプレッションも増えるかなと。今の私はモノマネをやめて、エンゲージが低いからとにかく見てくれる人の熱量を高めることが必要で。あとは、PRの動画にあえて「#PR #PR #PR……」ってめっちゃハッシュタグを入れてみたり、BGMをさりげなく2000年代に流行ったゲーム音にしてみたり…。そういう「ツッコみポイント」を用意しておくと、反応してくれる人が多いんです。
ほし:めちゃめちゃ仕込んでますね…!
ほし:そんなマーケティングセンスは、どこで培ったんですか?
くつざわさん:うーん、実家が飲食店っていうことも関係あるかもしれません。看板娘としてお店によく立たされていたので、子どものころから「気に入られるために人をよく見る」という意識は、かなり強かったと思います。
くつざわさん:焼肉屋なんですけど、母が一人で苦労していたので、なんとか力になりたいと思って…「陽気に振る舞うため」に一生懸命でした。面白いキャラでおしゃべりしに行ったほうがいいのか、静かに聞く側に徹したほうがいいのか、妹みたいに甘えたほうがいいのか…とか、相手をよく観察してましたね。実際にどれだけ関係しているかはわかりませんが…「自分は相手に何を求められているのか」をよく考えてたので、今思えばマーケティングに興味を持つのは自然な流れだったのかも。
ほし:なるほど。最近は、マーケターとしてのイベント登壇なども多いですよね。
くつざわさん:そうですね。ありがたいことに、いろんな企業からお声がけをいただくことが増えて、SNS発信という“表から見える”活動よりも、裏側のお仕事が多くなってます。
ほし:裏側というと、たとえば?
くつざわさん:最近だと、何社かの広告代理店にお声がけいただいて、プロモーションの企画を考えて、SNSのマーケティング部分を任せていただいたりしてます。資料をつくるとか、プレゼンとか…まだまだ日々勉強って感じなんですけど。
くつざわさん:でも、SNSで目に見える活動をあまりしてないと、「くつざわオワコン」って声が聞こえるようになりました。
ほし:ああぁ…
くつざわさん:モノマネをやっても「つまらなくなった」。モノマネ以外に手を出しても「お前はそうじゃない」。何もしなかったら「そろそろ消えそう」。弱音を吐いたら「恵まれてるくせに」…結局どの方面に転んでも“槍”が飛んでくるんですよね。
ほし:ツラすぎる…!
くつざわさん:ただ、私はどんな人とでも「話したらわかりあえる」と思ってたし、SNSで人を叩いてるのってどんな人なんだろうっていう興味もあったんですよ。それで1回、しつこく私への批判ツイートをしてた人にDMして、飲みに行ったことがあったんです。
ほし:ええ!? 2人でですか?
くつざわさん:はい(笑)。ただ、全然イメージと違って普通にいい人だったんですよ(笑)。
ほし:えっ、そうなんですか?
くつざわさん:叩くのには彼なりの理由があったんですが、想像ではたどりつけないようなものでした…結論、「みんな辛いんだ」というシンプルなところに着地して。その話を聞いたときに、「あ~、人を“救う”とか無理なんだなぁ」って思ったんです。
くつざわさん:人を批判する人って、想像もできないような理由や事情で叩いてるんだって痛感したんです。誹謗中傷に引きこもって泣くような時期もあったんですけど…意味ないなと。結局、「くつざわ」の本質をわかっているのは私自身だけなんですよね。みんな、赤いリンゴの表面だけを見て「中も赤いはずだ」って好き勝手言っているだけ。
ほし:くつざわさん、最近は「note」で、かなり赤裸々に自分の弱さを吐露している印象なのですが、多くの人に公開する抵抗はなかったんですか?
くつざわさん:弱さを見せることって、メリットしかないと思ってるんですよ。特に、ちゃんと「見せ方」を考えれば考えるほどメリットが大きい。
ほし:その「見せ方」が難しいんですよね…くつざわさんはどのように意識しているんですか?
くつざわさん:ひとつは、「出す場所に合った“弱さ”を出す」こと。おもにnoteでは、“戦っているなかでの正直な弱音”や“不安”みたいなものを書いています。noteを読んでくださる方は社会人が多いんです。広告業界の方だったり経営者だったり、noteを通じてお仕事のお声がけをいただくことも多い。だから、「くつざわ、頑張ってんじゃん」って思ってもらえるように、というか(笑)。
ほし:なるほど。ちょっと嫌な言い方をすると「大人が手を差し出したくなるような見せ方」って感じですかね。
くつざわさん:そうですね!(笑) でも嘘を書いているわけじゃないですよ。めちゃくちゃ素です。
くつざわさん:逆に、インスタのフォロワーは大半が同世代の大学生なので、“酔いつぶれているところ”とか“遅刻しそう”とか、クズ全開のくつざわをシェアしています。自分と同じなんだって、親近感を持ってもらえるように。
ほし:なるほど~! “弱さ”にも種類があるんですね…どんな人が見ているかをきちんと把握したうえで、刺さるように設計しているの、さすがです。
くつざわさん:もうひとつは、ダメな自分の“弱さ”を、あえてカッコよく見せようと考えること。「どういう言い方をすれば、多くの人に共感してもらえるか」「どう見せれば、自分がぶつかっている悩みが伝わるか」と考える。カッコいい伝え方や言い回しができると、SNSで格段にシェアされやすくなるんです。そうやって考える過程で、書きながら思考を整理するに時間にもなっているんですよね。
くつざわさん:弱音を吐くことで自分も楽になるし、応援してもらえるし、みんなからのコメントで救われるし、ビジネスチャンスにもなる。弱い部分ほど、ガンガン見せていくしかないでしょって感じです。
ほし:最後に、『情熱大陸』にたどりつく前の、現在やりたいことなどあれば教えてください!
くつざわさん:「心の余白」をつくることを提案したい…と思ってますね。
ほし:心の余白?
くつざわさん:まだふんわりしているんですけど…私自身、SNSでバッシングされて病んでいるときに、地方に行って、きれいな景色のなかでゆっくりしたら心が軽くなったんですよね。そういう時間って、絶対に必要じゃないですか。それこそ、日ごろから人を誹謗中傷している人ほど「心の余白」が必要だと思うんです。だから、「都会の喧騒から少し離れない?」っていうメッセージを伝えられるような、いわゆる“お出かけ系”のウェブメディアやコンテンツが作れればと思ってます。
くつざわさん:私、『せんべろnet』っていう居酒屋の飲み歩き情報をまとめたメディアの大ファンで。いつか私も、お酒を扱ったメディアを立ち上げたいと思っていたんです。
急におっさん。好きなお酒は「サッポロ黒ラベル」とのこと
ほし:そういうプランがあったんですね…!
くつざわさん:当初描いてたプランと、今やりたいことはずいぶん変わったんですが、これが今考えていることです。当面は、『情熱大陸』と「メディアの立ち上げ」に向けて、頑張っていこうと思っています。
Twitterの“叩く文化”に嫌気がさし、SNSから離れていく人も多いなかで、くつざわさんは頑なに「やめない」「休まない」という選択をつづけてきました。「週に50回くらいSNSやめたいって思ってますけどね(笑)。でも私には成し遂げたいことがあるから、『一過性の人でしょ』と言われようと、このチャンスを使ってやるんです」。そう強気で話す彼女にたくましさを感じながらも、同時に心配にもなりました。19歳にしてSNSの激流に乗り、人生の可能性が広がったぶん、代償も大きかったように思います。それでも、トライアンドエラーをくり返す彼女を、これからも応援していきたいと思います。〈取材・文=ほしゆき(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美(@hiromi_ike)〉
女子大生くつざわ。|notehttps://note.com/kutsuzawa_dayo