相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、利用者ら45人を殺傷したとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた元同園職員の植松聖(さとし)被告(29)は8日、横浜地裁の裁判員裁判(青沼潔裁判長)の初公判で起訴内容を認めた。弁護側は、当時は精神障害の影響で責任能力が失われていたか著しく低下していたとして無罪を訴えた。一方、検察側は事件は計画的で完全責任能力があったと主張した。
「障害者は不幸をつくる」という差別的な動機によるとされる事件は、被告の責任能力の有無と程度が争点となる。地裁は被害者保護のために法廷で被害者の名前を明らかにしないことを決定。1人を除いて、死亡や負傷程度などによって甲、乙、丙の3グループに分けたうえでアルファベットを割り当てて、「甲A」「乙A」などと呼んだ。
植松被告が公判中に暴れだしたため、裁判長は休廷を宣言。被告は午後に再開された審理に出廷しなかった。
検察側は冒頭陳述で、被告が園で働き始めた当初は障害者のことを「かわいい」と感じていたのに、勤務経験や見聞きした社会情勢を踏まえて「意思疎通のできない障害者は不幸を生み出す」「障害者は殺した方がいい、殺す」と考えが特異に変化したと指摘した。
事件前にハンマーを購入するなど計画性があり、職員に見つからない場所から侵入して意思疎通のできないと判断した障害者を選んで事件に及んだ点などから一貫性もあったと強調。植松被告が事件の約5カ月前に措置入院した際に大麻精神病と診断され、事件後の尿鑑定でも大麻の陽性反応が出たことを踏まえても、大麻の影響は犯行時期を早めたに過ぎず、動機がつくられた過程は正常な心理の範囲内で完全責任能力があったとした。さらに「動機は反人道的。反省態度がなく更生可能性がない」とも述べた。
弁護側は冒頭陳述で、植松被告が大学時代には教師になるために努力していたことや、12年12月に園に就職した当初は障害者について「こうしたら喜んでくれる」などと身ぶりを加えて友人らに話していたことを挙げ、「本来は明るく優しい性格だった」と述べた。しかし、ほぼ同時期から大麻を使用し始め、事件の直前まで多い時は日に数回、乱用し続けたため、精神障害になったと主張した。
弁護側はさらに、被告が「政府の代わりに殺すんだから100億円をもらえる」「自分はヒーローになる」などと次第に不可解な発言をするようになり、幻聴もあったと指摘。大麻は長期常用で幻覚や妄想が起こる大麻精神病と呼ばれる状態になるとして「大麻精神病、あるいはその他の精神疾患が与えた影響で、善悪を判断する能力、あるいは行動をコントロールする能力もなかった」と訴えた。
起訴状などによると、植松被告は16年7月26日未明、意思疎通のできない障害者を殺害しようと考え、園の居住棟に刃物を持って侵入し、入所していた10~70代の男性9人、女性10人を殺害、26人に重軽傷を負わせたとされる。【中村紬葵、国本愛】