名古屋市南区の住宅で2017年、80代の夫婦を殺害し財布を奪ったとして強盗殺人罪に問われ、1審・名古屋地裁で殺人と窃盗罪が適用され無期懲役判決を受けた無職、松井広志被告(45)の控訴審判決で、名古屋高裁(堀内満裁判長)は9日、「強盗殺人を認めない1審判決は事実誤認がある」として1審判決を破棄し、審理を地裁に差し戻した。弁護側は上告した。
殺害動機が強盗目的かどうかが争点で、弁護側と死刑を求刑した検察側の双方が「事実誤認がある」として控訴していた。弁護側は量刑不当も訴えていた。
1審の裁判員裁判判決は「金品を得るために殺害しようと考えるほど金銭的に追い詰められていたかは疑問」などと指摘。さらに物色の範囲から見て殺害後に金品を盗もうと思い立った可能性を否定できないとして「強盗目的があったと認められない」としていた。
控訴審判決は「物色範囲は強盗目的の有無を推論する事情として合理性があるとは言いがたい」などと判断した上で、「強盗目的が認められることを前提に、事案にふさわしい刑を決める必要がある」とした。
弁護側は判決後、報道陣に「裁判員裁判で判断した事実認定を覆すことはあり得ない。事実認定の判断が間違っている」と話した。名古屋高検の河瀬由美子次席検事は「検察官の主張が認められた適正・妥当な判決だと考えている」とコメントした。
1審判決によると、松井被告は2017年3月、大島克夫さん(当時83歳)と妻たみ子さん(同80歳)の首を刃物で刺すなどして殺害し、約1200円が入った財布を盗んだ。【川瀬慎一朗】