荒波に削られて切り立った高さ25メートルの「海食崖」を貫くトンネルを抜けると、目の前に広がるのは長い時が造り出した不思議な岩の世界。島根県浜田市国分町にある国天然記念物の石見畳ケ浦(いわみたたみがうら)。1932年に指定され、多くの地学現象が見られる「天然の博物館」だ。【竹内之浩】
畳ケ浦は約1600万年前の砂岩層の浅い海底が地殻や海水面の変動で水面近くに現れ、波による浸食で水平に削られた「波食棚」で広さ約4・9ヘクタール。「節理」という亀裂が縦横に走り、畳を敷き詰めたように見えるため「千畳敷」と呼ばれる。
その上に並ぶのが「ノジュール(団塊)」と呼ばれる高さ30~40センチ、直径50センチ前後の腰掛け状の丸い岩。海に向かって11列あり、畳ケ浦を代表する景観だ。貝の化石から出る炭酸カルシウムなどが砂岩を固くし、周囲が波に浸食されて残った。
ひときわ目立つのは「馬の背」と呼ばれる岩山。地層が傾きながら隆起し、砂岩とれき岩の層がはっきり分かる。付近にキノコやイグアナのような形の岩があり、風や雨による造形が楽しい。
多様な貝やクジラの骨などの化石も観察できる。流木の化石にはフナクイムシが開けた巣穴の化石も。二枚貝の化石がハート形に残る「ハッピーシェル」を発見できれば幸せになれること間違いなし。
最初のトンネルの途中には波の浸食でできた「賽(さい)の河原洞窟(どうくつ)」があり、そこから望む奇岩「猫島」は絶景。他にもマグマが地表近くまで入り込んで固まった「岩脈」や断層などの地学資料もある。
一帯は古くから和歌に詠まれた景勝地。環境省の「かおり風景100選」に県内で唯一選ばれ、磯の香りが漂う。夕日の名所としても名高い。冬は観光にあまり向かないが、3月からは「浜田市観光ボランティアガイドの会」による案内も。牛尾博美会長(73)は「1600万年前の地層を歩き、悠久の時の流れを感じてほしい」と呼びかけている。
メモ
JR山陰線・下府駅から徒歩25分、車では浜田道浜田インターチェンジから国道9号経由で11分。3~11月(7、8月除く)の日曜、祝日は市観光ボランティアガイドの会が無料で案内してくれる(平日も予約で対応可)。問い合わせは市観光協会(0855・24・1085)。