タイの発電所事業を巡る外国公務員への贈賄事件で、不正競争防止法違反に問われた大手発電機器メーカー「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS、横浜市)の元取締役常務執行役員・内田聡被告(65)に対し、東京地裁(吉崎佳弥裁判長)は13日、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。
事件では、昨年6月に導入された日本版「司法取引」(協議・合意制度)が初適用され、東京地検特捜部の捜査などに協力した同社が法人としての起訴を免れた一方、内田被告のほか、元執行役員ら2人が在宅起訴された。内田被告以外の2人は起訴事実を認めて有罪が確定したが、公判が分離された内田被告は「贈賄を了承していない」として無罪を主張していた。
起訴状では、内田被告は2人と共謀し、2015年2月、同社が建設を請け負ったタイ南部の火力発電所近くにある仮設桟橋に建設用資材を荷揚げする際、桟橋の使用を認めてもらう見返りに、タイ運輸省港湾局の現地支局長に約3990万円相当の現地通貨を支払ったとしている。
検察側は今年7月の論告で、同社側が現地支局長から「金を払わなければ船を桟橋に接岸させない」と賄賂を要求され、内田被告は2人から対応を相談されたと指摘。内田被告が了承した結果、贈賄が実行されたとして「事業の最高責任者だった内田被告が果たした役割は大きい」と主張した。
一方、弁護側は最終弁論で「被告は2人に贈賄以外の方法を検討するよう指示した」と反論していた。